【1月31日 AFP】イスラエルの考古学者らはこのほど、同国南部でダビデ王(King David)とソロモン王(King Solomon)時代のものとされる紫色の染料で着色された糸くずを発見したと明らかにした。

 イスラエル考古学庁(IAA)、テルアビブ大学(Tel Aviv University)およびバルイラン大学(Bar-Ilan University)の共同声明は、「織布のくずや飾り房、ロイヤルパープルの色に染められた毛糸の繊維を見つかり、研究者らは衝撃を受けた」としている。

 発表によると、これらは古代の銅生産地であるティムナ渓谷(Timna Valley)で発掘された着色織物を調査していた際に発見された。「直接放射性炭素年代測定によって、聖書に登場するエルサレムのダビデ王とソロモン王の時代に相当する紀元前1000年前ごろのものであることが分かった」

 イスラエルや地中海東岸地域で鉄器時代の紫色に染められた繊維が見つかったのは初めて。

 IAAで有機物遺物を担当するナーマ・スケニク(Naama Sukenik)氏によると、紫色は王室や貴族階級、司祭を連想させる色で、紫の染料は「多くの場合金より高価」だったという。

「今回の発見まで、われわれは鉄器時代の紫色の産業の証拠を示す軟体動物の貝殻のごみや、染料が付着した陶器の破片しか見つけられていなかった」とスケニク氏は指摘し、「いま初めて、約3000年間保存されていた染料付きの布そのものの直接的証拠を得た」と述べた。

 染料の生産地であるレバノン南部の都市の名前から「ティリアン(Tyrian)パープル」とも呼ばれるこの色は、いまでも非常に価値が高い。

 IAAなどは、「ティムナ(Timna)から300キロ以上離れた地中海沿岸にいた軟体動物から生産されたこの染料は、聖書でよく言及されているほか、ユダヤ教やキリスト教の文脈でもいろいろな形で登場する」と説明。

 テルアビブ大学の考古学部教授、エレツ・ベンヨセフ(Erez Ben-Yosef)氏は、この発見が「鉄器時代の遊牧民社会に対するわれわれの概念に革命をもたらす」はずだと述べている。(c)AFP