【1月30日 AFP】英国のボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相は29日、欧州連合(EU)がワクチン輸出制限の一環として、アイルランドを経由する英国への物流を認める英EU間の協定を一時停止する姿勢を見せたことを受け、ウルズラ・フォンデアライエン(Ursula von der Leyen)欧州委員長に対して「深刻な懸念」を表明した。

 英国がEUと合意したEU離脱(ブレグジット、Brexit)協定に盛り込まれた北アイルランド議定書は、EU加盟国のアイルランドと英領北アイルランドとの国境で税関検査を行わない自由な物流を認めているが、議定書第16条は、協定が「持続する可能性のある深刻な経済的・社会的・環境的な困難」につながる場合には、一方的に特定の物品の輸出を停止できるとしている。

 EUは29日、英製薬大手アストラゼネカ(AstraZeneca)とワクチン供給を巡って対立する中、EU域内の工場で生産されたワクチンの輸出を監視し、場合によっては輸出を禁止する措置の一環として、この条項を発動する構えを見せていた。

 EUはアストラゼネカに対し、英国と先に結んだ契約は維持する一方で、EUへの供給が遅れているのは契約違反だと非難している。

 英首相官邸によると、ジョンソン氏はフォンデアライエン欧州委員長と電話で会談し、「EUが本日(29日)、ワクチンの輸出に関して取った措置によって起こり得る影響について、深刻な懸念を伝えた」。

 一方、欧州委員会のステラ・キリアキデス(Stella Kyriakides)委員(保健・食品安全担当)は、「われわれは特定の国から自らを守っているわけではなく、いかなる国と競争しているわけでもない」と主張している。(c)AFP