【1月30日 AFP】韓国女子トライアスロンのチェ・スクヒョン(Suk-Hyeon Choi)選手が昨年自殺したことに関連する裁判で、元同国代表監督のキム・ギュボン(Gyu-bong Kim)被告が29日、同選手への暴行罪で懲役7年の有罪判決を受けた。権力への絶対服従が求められる厳しい競争社会の同国スポーツ界ではスキャンダル発覚が続いており、今回のケースはその中でも最も物議を醸すものとなっている。

 大邱(Daegu)の地方法院(地裁)は判決文で、チェ選手の自殺にはキム・ギュボン被告をはじめ、同選手が所属していたチームの元主将チャン・ユンジョン(Yun-jung Jang)被告と元チームメートのキム・ドファン(Do-hwan Kim)被告に責任があり、被告らは深く後悔しているものの、故人が「それらの謝罪を受け入れることは不可能」だと述べた。 

 2015年に台湾・台北で行われたASTCアジアトライアスロン選手権(2015 New Taipei ASTC Triathlon Asian Championshipp)のジュニア女子部門で銅メダルを獲得したチェ選手は、元所属クラブのコーチ陣やチームメートから、長年にわたり暴行を加えられたり暴言を浴びせられたりした後、チームの宿舎で命を絶っているのが見つかった。母親と最後にやり取りしたメールの中には、暴行を加えた人の「罪を暴く」よう求めているものがあり、これが地元メディアで広く取り上げられていた。

 検察は当初、キム・ギュボン被告に対して懲役9年を求刑していたが、地裁は被告の身体的暴行によってチェ選手が「22歳で命に関わる選択をした」と結論付けた後、懲役7年を科した。一方、チャン被告には懲役4年、キム・デファン被告には執行猶予付きの懲役1年6月が言い渡された。 

 聯合(Yonhap)ニュースは、被告が自分たちの権力を乱用し、長年にわたりチェ選手に暴言を吐いたり暴行を加えたりしたこの事件について、同地裁が「被告は後悔の念を示し、謝罪を求めているが、被害者がそれらの謝罪を受け入れることはもはや不可能である」と裁定したと伝えた。

 これに先立ち先週には、チェ選手の元理学療法士が同選手への性的および身体的暴行で懲役8年と罰金1000万ウォン(約94万円)を言い渡されていた。

 チェ選手は2016年の国内選手権エリート女子の部で4位に入ったが、2019年の同じ大会では期待に応えられず14位に終わっていた。同国のニュース専門局「YTN」が昨年放送した録音音声では、コーチが同選手の体重が増えたことに激怒して「3日間何も食うな」と命令したり、「責任を取ると約束したよな」と発したりしていた。さらには、「歯を食いしばれ」と言った後に平手打ちする音も確認されていた。

 韓国スポーツ界では前週にも、五輪で2個の金メダルを獲得したショートトラック女子の沈錫希(Suk-Hee Shim、シム・ソクヒ)に性的暴行を加えていた罪で、元コーチのチェ・ジェボム(Cho Jae-beom)被告が懲役10年6月の有罪判決を受けた。(c)AFP