【1月30日 AFP】欧州連合(EU)は29日、英製薬大手アストラゼネカ(AstraZeneca)と英オックスフォード大学(University of Oxford)が共同開発した新型コロナウイルスワクチンの全成人への使用を承認した。

 EUの発表は欧州医薬品庁(EMA)による勧告を受けたもの。EUが承認したワクチンは、米製薬大手ファイザー(Pfizer)と独製薬ベンチャーのビオンテック(BioNTech)が共同開発したものと、米製薬大手モデルナ(Moderna)が開発したものに続き3つ目となった。

 アストラゼネカのパスカル・ソリオ(Pascal Soriot)最高経営責任者(CEO)は、EUによる承認はワクチンの「価値を明確に示す」ものだと歓迎。自社製のワクチンはファイザー/ビオンテックとモデルナのワクチンとは違い超低温保管が必要でないことから「接種が容易」と指摘した。

 だが、EUの承認を発表したウルズラ・フォンデアライエン(Ursula von der Leyen)欧州委員長はツイッター(Twitter)への投稿で、ワクチン供給をめぐりアストラゼネカとの間で生じている問題を念頭に、「同社が合意した4億回分を供給することを期待している」とくぎを刺した。

 アストラゼネカは生産上の問題を理由に、当面はEUと合意した量のワクチンの一部しか供給できないと通告していた。供給の遅延は、すでに苦戦を強いられている欧州のワクチン接種計画にとって大きな痛手となると同時に、限られた同社製ワクチンの分配をめぐり、EUと元加盟国・英国との間の対立の火種となっている。

 EUは29日、アストラゼネカと交わした契約書を一部黒塗りにして公開。さらに、欧州で製造されたワクチンの域外輸出を禁ずることを可能とする仕組みを導入すると発表した。

 アストラゼネカ製ワクチンは、EU域内でも議論を引き起こしている。ドイツの予防接種委員会は28日、有効性を示す証拠が不十分だとして65歳以上への使用を推奨しないと勧告。EMAが全年齢層の成人に使用できるとの見解を示した後も、この勧告を維持した。

 フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領も、同ワクチンの高齢者への効果について「幾分効果がない」とみられると表明したが、フランス国内での使用に関する最終判断は保健当局に委ねるとした。

 新型コロナウイルスをめぐっては、南アフリカで検出された変異株に対して効かないワクチンがある恐れも懸念されている。28日と29日に発表された新たなデータでは、ノババックス(Novavax)とジョンソン&ジョンソン(Johnson & Johnson)の米2社が開発したワクチンについて、それぞれ平均で89.3%と66%の有効性が示されたが、ノババックスのワクチンが英国の変異株に高い効果を示した一方で、両社のワクチンはいずれも南アフリカの変異株に対する効果は比較的低かった。

 一方、ファイザーとモデルナは、自社のワクチンは両変異株にも効果があると発表している。(c)AFP/Jan HENNOP with AFP Bureaus