【1月27日 AFP】イタリアの古代ローマ都市ポンペイ(Pompeii)遺跡の出土品を集めた「アンティクアリウム(Antiquarium、ポンペイ付属博物館)」が一新され、常設の博物館として25日、再開した。ここ数十年にわたる考古学上の発見物も展示されている。

 同館は、銅像、フレスコ画、金銀の宝飾品などをはじめ、約2000年前の西暦79年に起きたベズビオ火山(Mount Vesuvius)大噴火の犠牲者の遺体を石こうで復元したものも収蔵している。

 興味を引くのは魔術師の道具入れだ。中には魔よけ、指輪、小さな彫像やお守りの数々が入っており、これらは象牙、銅、琥珀(こはく)、釉薬(ゆうやく)が塗られた陶器で作られている。

「19世紀以来、当地で発掘された重要な品々の一部が見られる」とポンペイ考古学公園(Archaeological Park of Pompeii)のマッシモ・オザンナ(Massimo Osanna)事務局長はAFPに語った。「噴火のあった運命の日に至るまでの、ポンペイの何世紀もの歴史をたどれる」

 最も強烈な展示は、ポンペイ最後の日々を物語る部屋だ。灰に埋もれていた遺体が残した空洞に、石こうを流し込み固めてできた像が置かれている。

■強烈なワインの匂い

 オザンナ氏は、国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)世界遺産(World Heritage)の一部でもある考古学公園を2014年から率い、欧州連合(EU)の資金援助で進む保存プロジェクトの指揮をとっている。1873年ごろ創設された博物館は、1980年にイタリア南部で発生した大地震の後閉鎖されたが、2016年に一時展示スペースとして再開していた。

 プロジェクトの考古学者が昨年12月、ファストフードカウンターのような「テルモポリウム」を発見したと発表した。

 土器鍋からはカモの骨の破片や、ブタ、ヤギ、魚、カタツムリの死骸を発見。そのうちの一つの鍋から「強烈なワインの匂いがした」と考古学者の一人が述べた。

 フレスコ画の一枚は、犬の姿の上に走り書きされた選挙運動のスローガンや落書きがあった。

■「にぎわいを消し去る大惨事」

 2019年、ポンペイは390万人以上の訪問者を迎え、ローマのコロッセオ(Colosseum)、フィレンツェ(Florence)のウフィツィ美術館(Uffizi Galleries)に次ぐイタリアで3番目に人気の観光名所だった。

 しかし、新型コロナウイルス感染拡大のため、他の文化遺産と同様にポンペイもここ数か月はほぼ閉鎖されていた。18日に再開されたが、訪問者数は1日平均100人以下だ。

 訪問客の8割減に対し、政府の寛大な補助金が頼りだとオザンナ氏は述べた。開館日、広大な考古学公園に報道陣、考古学者、関係者以外の人影はなかった。

 非日常的な現状だが、今が訪れるチャンスだとも言う。

「観光客のいないありさまを見て、ここで命を奪い、場所のにぎわいを消し去った恐ろしい大惨事について、みなさんはより深く感じるのではないか」 (c)Alvise ARMELLINI/AFP