■「綱渡りの綱がコロナで切れた」

 日本では、200万円以下の年収で生活する人が1000万人を超え、6人に1人は「相対的貧困」に該当する。これは、所得が国内の等価可処分所得(手取り収入などを世帯人数で割って調整したもの)の中央値の半分(貧困線)に満たない状態のことで、国の一般的な生活水準と比較したときの困窮者人口の割合を示す指標だ。

 経済学者によると、過去6か月で50万人が失業している。その波及効果が国内に広がっていると市民団体は指摘する。

 NPO法人「TENOHASHI」は、東京の副都心・池袋でホームレスの人や困窮している人々に食事や衣類、寝袋の他、医療援助を提供している。

 同NPOの清野賢司(Kenji Seino)代表理事は、すでに困窮していた人々は綱渡りの状態にいたが、コロナ禍で「その綱が切れた」と言う。

 経済的苦境は、昨年末にかけて見られた自殺数の増加の一因と思われると専門家らは警告している。

 日本では失業率が1%上昇すると、年間の自殺者がおよそ3000人増える、とニッセイ基礎研究所(NLI Research Institute)の斎藤太郎(Taro Saito)氏は指摘する。

 特に経済的困難に直面しているのが女性たちだ。多くの女性は、小売り・飲食・宿泊業など、コロナの打撃を受けている業界で非正規雇用で働いている。

 清野氏のNPOが援助している人々のうち、女性の割合は20%以下だという。だが、援助を望みながら踏み出せずにいる女性はもっと大勢いるとみている。福祉を受けると「子どもが胸を張って生きられなくなる」と感じる女性もいると清野氏は述べた。