【1月26日 AFP】米国人は新大統領の就任式であらゆることに注目する傾向がある。就任宣誓に臨んだジョー・バイデン(Joe Biden)氏がスイスの高級時計メーカー、ロレックス(Rolex)製の7000ドル(約70万円)の腕時計を身に着けていたことを、そんな国民たちは見逃さなかった。

 バイデン氏のこの選択は、最初の慣習破りの一つとなった。歴代の大統領が就任式に臨む際に選んできた腕時計は、もう少し普段使いのもの、しかも国内で製造されたものだった。それこそバイデン氏が振興したいと言っているタイプの産業だ。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は、バイデン氏がしていたステンレススチール製のロレックスのモデル「デイトジャスト(Datejust)」について、「(ドナルド・)トランプ(Donald Trump)という名前でない全ての大統領が近年、目立つ形で着けてきた庶民の腕時計とは大違いだ」と皮肉った。

 もちろん、ロレックスを着用した大統領はバイデン氏が初めてではない。ドワイト・アイゼンハワー(Dwight Eisenhower)、リンドン・B・ジョンソン(Lyndon B. Johnson)、ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)といった大統領たちもファッションの好みが似ていた。

 しかし、ビル・クリントン(Bill Clinton)氏の時代から、大統領はより控えめな、あるいは愛国的な腕時計を好んできた。

 クリントン氏は米時計メーカー、タイメックス(Timex)の「アイアンマン(Ironman)」を選んだが、米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)の称賛は得られなかったようで、同紙は1993年の就任式後、この時計を「れんがのように厚く、ヘルニアのように立派なプラスチック製のデジタル腕時計」と評した。

 クリントン氏の次のジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)氏はさらに節約家で、同じタイメックスの50ドル(約5000円)以下のモデルを身に着けていた。

 バイデン氏が副大統領を務めた2009年から2017年の大統領、バラク・オバマ(Barack Obama)氏は、デトロイト(Detroit)に拠点を置くシャイノラ(Shinola)やカリフォルニア州のヨーググレイ(Jorg Gray)といった米国の時計メーカーのモデルを愛用していた。

 一方、ゴールド好きで知られるトランプ氏が着けていたのは、パテック・フィリップ(Patek Philippe)の「ゴールデン・エリプス(Golden Ellipse)」やロレックス、ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)といったスイス製の高級腕時計だった。

 ツイッター(Twitter)上のバイデン氏のファンらは腕時計騒動に一斉に目を丸くし、トランプ氏を敵視する元スター・トレック(Star Trek)俳優のジョージ・タケイ(George Takei)氏は「ノー(ニューヨーク・タイムズ)。われわれはオバマがタンスーツ(明るい色のスーツ)を着ても気にしなかったように、ジョー・バイデンがどんな時計を着けようと気にしない」と投稿した。(c)AFP