【1月24日 AFP】新型コロナウイルスの感染拡大により中国・武漢(Wuhan)がロックダウン(都市封鎖)されてから、23日で1年を迎えた。武漢市民の間には危機を乗り越えたことへの誇りと、流行再燃を懸念する気持ちとが入り交じっている。

 2020年1月23日、武漢で市民1100万人が自宅隔離されるという忘れ難い76日間の封鎖の日々が始まり、世界に衝撃が走った。この事態により、謎の病原体への脅威は一気に広まった。

 同日午前10時には公共交通機関が全面運休となり、特別な許可がない人の市外への移動は禁じられた。不気味な沈黙の幕開けだ。

 だが、今も世界中で新型コロナウイルスとの闘いが続く中、現在の武漢には昨年のゴーストタウンのような雰囲気はない。市内では車が行き交い、歩道は人でにぎわい、公共交通機関や公園も人であふれている。

 武漢の川沿いをマスクをせずにジョギングしていた20代の男性は、「昨年は怖かったが、流行が収束してからは状況が大きく改善した」と述べた。この日、川沿いでは曇り空の下、多くの人が運動をしていた。

 昨年新型コロナウイルスに感染し、病院で67日間にわたる闘病生活を送ったフアン・ゲンベン(Huang Genben)さん(76)は、血を吐きながら死を覚悟したという。

「夜、目を閉じる時、もう一度目を開けられるか分からなかった」

 現在、フアンさんは他の多くの武漢市民と同じく、中国政府や国民が感染拡大を食い止めるために「大いなる努力」をし、それを武漢が示してみせたことに誇りを持っている。

 フアンさんは「政府の政策が正しかったこと、市民の協力が正しかったことが、結果からも分かる。世界中で感染が拡大しているというのは心が痛む」と語った。

■強まる国際社会の批判

 中国政府は、自国の対応と回復は「英雄的」であったとのプロパガンダを展開している。

 しかし、23日に行われた中国政府の公式行事はない。中国政府のコロナ対応をめぐっては流行を隠蔽(いんぺい)、あるいは初動を誤ったことで感染が拡大したとの批判の声が上がっており、当の政府も流行初期については堅く口を閉ざしたままだ。

 新型コロナウイルスは一般的に、野生動物が売られていた武漢の海鮮市場から広まったと考えられている。

 ただ、中国は発生源についてほとんど情報を明らかにしておらず、欧米諸国からは透明性の向上を求める声が上がっている。

 武漢封鎖から1年が経過したことについて、中国政府からの事前告知はなく、国営メディアでの言及も最小限にとどめられた。

 北京大衆紙の新京報(Beijing News)の論評は、武漢が負った犠牲や今も続く新型コロナへの脅威に触れつつ、積極的なロックダウンが世界のモデルになったことを称賛するという「複雑な心境」を表明。

 また「苦労して勝ち取った結果を不注意によって失ってはならない。そして流行を再発させてはならない」と強調し、「武漢に敬意を。強く恐れ知らずの中国国民に敬意を!」と鼓舞した。(c)AFP/Leo RAMIREZ, Sébastien RICCI