■転換点を捉える

 EVの進撃を先導するのがノルウェーだ。昨年、同国の新車販売は54%をEVが占めた。プラグインハイブリッド車を含めると75%に達する。

 新車販売でEVが占める割合が2桁に届いているのは、他にはアイスランドだけ。世界の自動車市場におけるEVのシェアは5%に満たなかった。

「EVの生産コストが従来の車と同じになれば、世界的な転換点が来る」と語るのは、英エクセター大学(University of Exeter)で地球システム科学を専門とするティム・レントン(Tim Lenton)教授。ノルウェーにおけるEVの展開を、転換点の研究事例とした最近の論文の筆頭著者だ。

 EVの急速な普及の一因には、他人が持っている物を欲しがるようになる消費者の意識の変化もある。

 ノルウェーが単独で世界の炭素排出を変えるわけではない。しかし、2025年から炭素汚染源となる新車を禁止するなど、ノルウェーの画期的な取り組みが他へも波及し、世界的な機運の高まりにつながっているというのがレントン氏らの見解だ。

 英国と米カリフォルニア州は、2035年から販売をゼロエミッション車に限定する。また世界最大のEV市場となった中国は、同年にガソリン・ディーゼル車を禁止すると宣言している。

 産業界にも先駆者がいる。世界4位の自動車メーカー、米ゼネラルモーターズ(GM)は2月、2035年からゼロエミッション車のみを販売すると発表。米EV大手テスラ(Tesla)の株価は高騰し、最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク(Elon Musk)氏を一時、世界一の富豪に押し上げた。

「政府側と大手自動車メーカー側の双方から動きが生じているのは、まさしく転換がやって来る証しだ」とレントン氏は言う。