【4月22日 AFP】世界は人類の存続にかかわる脅威にようやく目覚めたかのように、地球温暖化を解決しようとする取り組みがあらゆる方面で加速している。

 例えば──

・最大の炭素汚染国・地域である中国、米国および欧州連合(EU)は、今世紀半ばまでに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の達成を約束している。
・世界の国内総生産(GDP)は昨年5%縮小したにもかかわらず、太陽光発電・風力発電の急増は続いた。
・人類の3分の2が「気候非常事態」を認識している。
・世界5大自動車メーカーの中の1社は、2035年以降、排ガスを出さないゼロエミッション車の生産に限定すると宣言している。
・主要投資家らは石炭から撤退し、化石燃料会社は企業価値が縮小している。

 気候変動対策の盛り上げ役となっている人々は、改善の兆しを手当たり次第につなぎ合わせ、楽観的な見通しを立てることが巧みだ。だから良いニュースばかり並んでいたら疑うべきで、悲観的になる理由も同じくらいあるはずだ。

 2015年に採択された地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」は、産業革命以降の気温上昇を2度未満、できれば「さらに低く」抑えることを目標としている。だが、このままでは、それどころか4度の上昇に向かっている。

 国連(UN)のアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長は2月末、各国のゼロエミッションの誓約を認めた上で「各国政府の熱意は、気温上昇を1.5度に抑えたり、パリ協定の目標を達成したりするために必要なレベルにはほど遠い」と述べた。

 国際エネルギー機関(IEA)は3月2日、世界の二酸化炭素(CO2)排出量が新型コロナウイルス流行前の水準に戻ったと発表した。

 しかしエネルギー界から産業界、地政学、金融界から世論まで、あらゆる分野でにわかに取り組みが活発化する中、世界はようやく気候問題の危機から脱しようとしているのではないかと専門家らは問う。

「振り子が正しい方向に強く揺れているかと聞かれれば、まさにその通りだ」とニューヨーク大学(New York University)の気候経済学者ガーノット・ワグナー(Gernot Wagner)氏は述べる。「米国内ではワシントン、デトロイト(Detroit)、シリコンバレー(Silicon Valley)、ウォール街(Wall Street)もそうだ」と言う。「互いの出方を待ったりせず、すべてが同時に起きている」

 この明るい展望のキーワードは「社会的転換点」だ。これは社会システムに起きた新たな変化がある水準に達し、新しい状況やパラダイムへ不可逆的に移行するポイントのことだ。テーマは、例えば肉を食べない食生活であるかもしれないし、究極の目標であるカーボンニュートラルの世界経済であるかもしれない。

 電気自動車(EV)もそうだ。10年前、EVの市場シェアはほとんどなく、内燃エンジンが急速に姿を消すことなど思いも寄らなかった。それが今ではEV革命が着々と進行中で、もはや止められないというのが大方の見方だ。