【2月7日 AFP】ドイツのベルリン国立バレエ団(Berlin State Ballet)初の黒人バレエダンサー、クロエ・ロペスゴメス(Chloe Lopes Gomes)さん(29)が、肌の色のせいで他者と違うと意識させられるのは、初めてバレエシューズを履いた子どもの時からだった。だが、入団してまたも「人種差別」を受けると、ついに反撃に出た。彼女の抗議により、バレエ団は内部調査を余儀なくされた。

 AFPのインタビューに応じたロペスゴメスさんは、国内最大の同バレエ団に対する主張を崩さず、クラシックバレエ界は人種差別問題に取り組むべきだと話した。

 居心地の悪い思いをさせられた体験の一例として挙げたのが、19世紀の古典バレエ「ラ・バヤデール(La Bayadere)」公演のリハーサルでの出来事だ。舞踊の指導を担当する女性が、身にまとう白いベールを各ダンサーに手渡して回っていた時だった。ロペスゴメスさんのところまで来ると、その女性は笑ってこう言った。「あなたにはあげられない。ベールは白いけど、あなたは黒人だもんね」

 同僚のダンサーの一人も、匿名を条件にロペスゴメスさんの証言を裏付けた。「冗談みたいに言っていた…ものすごくショックだった」

 屈辱的だったが、驚きはなかったとロペスゴメスさんは言う。

 フランス国籍を持ち、母はフランス人、父はカボベルデ人。ロシア・モスクワの有名なボリショイ・バレエ団(Bolshoi Ballet)でも学んだ。2018年にベルリン国立バレエ団に入団してから、「嫌がらせ」は絶えなかった。

「『白鳥の湖(Swan Lake)』の最初のリハーサルで、6人は入団したばかりだったけれど、直しの指示はすべて私に向けられた」とロペスゴメスさん。それが何か月も続いた。それでも辞めなかった。「努力家」を自負するロペスゴメスさんは、「自分はこのポジションに選ばれて当然の人間」だと証明したかったからだ。だが、多大なストレスから足を負傷。8か月間休み、抗うつ剤治療を受けた。