【1月19日 People’s Daily】夕方、太湖地域で雨が降り、空気はひんやり、しっとりとしている。

 お客さんを何人か近くの観光スポットまで送った後、宋琪明(Song Qiming)さんは自分の民宿に戻った。皆さんにあいさつをして、携帯電話を取り、次の来客のスケジュールとニーズのマッチングを始めた。

 ここは中国・江蘇省(Jiangsu)無錫(Wuxi)浜湖区(Binhu)和平村(Heping)。庭のある3階建ての家は、上品な内装、生き生きとした色の組み合わせ、シンプルかつトレンディーなデザイン。食事をしながらおしゃべりをしたり、食後にトランプをしたり、歌を歌ったり、景色を眺めて写真を撮ったりするなど、さまざまな音が入り交じり、活気がある様子だ。

 宋さんは生まれも育ちも平和村。大学を卒業した後、家から遠くない熱交換器工場で現場の労働者から主任になるまで働いていた。6年後、外の世界を見たいと思い、大手企業に転職し、対外貿易のマーケティング業務に従事した。

 仕事で新しい世界の扉が開けた。彼は多くの国や地域に行き、売り上げを伸ばすと同時に、多くの友人を得た。仕事以外にも、各地の風俗や文化、宿泊環境を観察することが好きだった。

 長年外で苦労して働いたことで、蓄えができてきた。家族と一緒に過ごす時間をより多くつくるため、宋さん夫婦は民宿を経営することにした。

 やると言ったらすぐやる。2018年、彼は別の企業で管理職をしていた妻の陳静怡(Chen Jingyi)さんと一緒に仕事を辞めた。貯金や、親友から借りたお金と、地元の創業無利子ローンも合わせて200万元(約3200万円)で、古い家を建て直し、改装した。その年の9月、二人の「和平小築」という名の民宿は正式に開業した。

 現地の複数の民宿ランキングでは、宋さんの民宿がずっと上位の評価を得ている。「今は社交性や娯楽性を重んじる観光客が多い。部屋は多ければ多いほどいいというわけではなく、公共スペースをうまく配置することがカギになる」。そのため、宋さんはさまざまな工夫をした。

 各大手プラットフォームでは、「宋さんの民宿に送迎サービスがあり、手料理を作ってくれるので、家に帰ったような気になれる」といったコメントが多数寄せられている。民宿の営業は好調で、去年の売り上げは100万元(約1600万円)を超えた。

 上と下の階で合計12室の客室のうち、4室が特に人気がある。この4室は窓から青山が見え、広々とした視界に緑豊かな自然、まるで絵画のような風景が広がる。「これはすべて良い環境のおかげだ!」と宋さんは言う。

 春、山道に沿って散歩すると、サルスベリの木の隙間から木漏れ日があふれ、道端にはバラ、コウシンバラ、ツツジが風に揺れる。夏にはヤマモモ、翠冠梨が枝いっぱいにかかり、木の下で猫が遊ぶ。秋にはイチョウの葉が地面にたくさん落ちて、足で踏むと心地が良い。冬は空が青く、太湖の波がきらめく。良好な生態環境は地元の民宿業の健全な発展に自信と力を与えた。

 2020年はコロナ禍の影響で、村の民宿は一時休業していたが、「4、5月に再開した後、徐々にお客さんが増え、現在はほぼ元通りまで回復した。政策サポートがあるため、未来の発展にはさらに自信がある」と宋さんは言う。2020年の国慶節・中秋節の連休の際には、入居率は90%に達し、わずかながら昨年の同期比でさらに上昇したという。(c)People’s Daily/AFPBB News