【1月15日 AFP】人間の活動で排出される二酸化炭素(CO2)の30%を吸収している森林など陸上の生態系が、急速な温暖化により、今後20~30年以内に「CO2吸収源」から「放出源」に変わってしまう恐れがあるとの研究結果が今週発表された。気候変動との闘いにおける新たな難局の到来に、研究者らは警鐘を鳴らしている。

 米科学誌サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)に掲載された論文によると、気温が一定の高さを超えると植物のCO2吸収能力が低下することが分かった。能力低下の限界温度は地域や植物種によって異なるが、現状の温室効果ガス排出傾向が続けば、今世紀末には地球上の植物の半分が大気中にCO2を排出するようになるという。

 北アリゾナ大学(Northern Arizona University)のキャサリン・ダフィ(Katharyn Duffy)氏率いる研究チームは、熱帯雨林や北方林(亜寒帯林)など最も多くのCO2を蓄積している生態系のCO2吸収能力が、2050年までに45%以上低下する恐れがあると指摘。「気温が臨界点に達するのは(中略)今後20~30年以内だ」と警告した。

■2040年にもCO2吸収量は半減

 研究では、生態系と大気の間のCO2の流れを追跡している国際的観察ネットワーク「フラックスネット(FLUXNET)」の1991年から2015年までの記録を分析。陸上生態系のCO2吸収量が低下する「臨界点」が存在するかどうかを調べた。

 植物は太陽光エネルギーを利用して、葉から吸収したCO2と土壌から取り込んだ水分を材料に光合成を行い、成長に必要な養分を生成する。このとき同時に生成された酸素が大気中に放出される。一方、エネルギーを細胞に供給する際には呼吸をし、CO2を放出している。

 研究チームは、植物によって臨界点は異なるものの、地球全体の光合成能力は一定の気温でピークを迎え、それより高温になると低下することを突き止めた。同時に、呼吸量は気温の上昇とともに全ての植物で増加し、上限がないらしいことも分かった。

 研究チームは、早ければ2040年までに地上の生態系におけるCO2吸収量は半減すると指摘している。(c)AFP/Marlowe HOOD