【1月16日 AFP】シリア反体制派最後の拠点、イドリブ(Idlib)で畜産業を営むアイマン・イブラヒム(Ayman Ibrahim)さん(25)は飼料価格の高騰に直面し、アジアの水田で肥料として使われている水生シダのアカウキクサを餌に使うことにした。

 シダというより池に浮かぶ草に見えるアカウキクサは、世界の大半では侵入植物とみなされているが、東南アジアの一部では家畜の餌として使われている。イブラヒムさんは、アカウキクサのおかげで、干し草やサイレージ(発酵飼料)のような従来の飼料と比べて大幅な経費節約になったという。

 国連食糧農業機関(FAO)によると、繁殖力の強いアカウキクサは1週間で2倍の重量になる。タンパク質が豊富で、ベトナムでは牛や魚、鶏の餌として、またシンガポールや台湾では豚の餌として使われている。

■「高い需要」

 2児の父親であるイブラヒムさんはかつて仕立て職人だった。だが、仕立屋の仕事はなくなり、2016年にシリア第2の都市アレッポ(Aleppo)の戦闘から逃れ、反体制派が支配するイドリブ県で畜産を始めた。

 しかし、それからの数年間でシリア・ポンドが暴落、輸入品の価格は急上昇した。家畜用飼料も急騰したため、イブラヒムさんは安価な代替飼料を探し始めた。「インターネットで1年かけて調べて水生のシダを見つけ、エジプトからトルコ経由で輸入できることが分かったのです」

 水がないと枯れてしまうため数回、輸送に失敗したが、昨年6月にアカウキクサの苗10キロ分が初めて到着した。「すぐに、ため池に植えました」とイブラヒムさん。以前使っていた飼料の70%をアカウキクサに置き換えた結果、一月300ドル(約3万円)かかっていた飼料代は、多くても100ドル(約1万円)までに抑えることができた。

 この成果にとても満足したイブラヒムさんは、育てたアカウキクサの余剰分を他の畜産農家に販売し始めた。「需要が高くて驚きました」

■「再生可能」

 FAOによると、シリアでは経済危機によって、家畜が30~40%減少した。畜産農家の多くは家畜どころか家族さえ養うこともできなくなっていたのだ。

 同じくアレッポ出身でイドリブ在住のオマル・アシャ(Omar Asha)さん(48)も生き残りを懸けて、家畜の飼料代を削減するためにアカウキクサに切り替えた。地元でやっと入手したアカウキクサの苗を今はため池で栽培し、鶏や羊の餌にしている。

 アシャさんによると、飼料代は60%削減された。さらに羊乳の生産量が増え、また羊の体重も以前より速く増えるようになった。

「アカウキクサで最も良いのは、支払いが買った時の一回だけだったことです」とアシャさん。「植えた後は、ただで再生可能な飼料となりました」

 映像は2020年12月に取材したもの。 (c)AFP/Aaref Watad