【1月16日 東方新報】中国・貴州省(Guizhou)の山あいにある直径500メートルの世界最大の電波望遠鏡(FAST)が、世界の科学界に開放されることになった。通称「天眼」と呼ばれるこの電波望遠鏡での観測申請を4月1日から受け付け、8月1日から観測時間を分配する。米領プエルトリコの直径300メートルのアレシボ天文台(Arecibo Observatory)の巨大電波望遠鏡が昨年12月に崩壊しており、「天眼」は今後、世界の宇宙研究の中心地として存在感を高めていきそうだ。

 中国は近年、基礎科学分野への投資にも力を入れており、中国科学院国家天文台が約12億元(約193億円)をかけて2016年、それまで世界一だったアレシボ天文台の巨大電波望遠鏡より巨大な「天眼」を建設。天然のくぼみを利用したおわん型の構造物で、中国科学院の白春礼(Bai Chunli)院長は「天眼を大鍋のようにしてチャーハンを作れば、全人類に茶わん4杯ずつ配ることができる」とその大きさを例えた。

「天眼」は2016年に試験運用を始め、2020年1月から正式に運用を開始。これまでに、規則正しい周期で光を放つ「パルサー」という天体を240個以上観測したほか、銀河系外星雲の中性水素線の観測、「宇宙の謎」とされる1000分の1秒ほどの間に起きる電波フラッシュ「高速電波バースト」の観測など、多くの成果をあげている。これらの観測・研究を積み重ね、ビッグバン発生当初の物理プロセスの研究に挑んでいく。

 数百メートル級の巨大電波望遠鏡は、資金力や技術力、維持運営費、人材確保などの観点から、米国と中国しか建設・運営は難しい。その米国もアレシボ望遠鏡で昨年8月、主鏡に裂け目が生じる事故が発生。11月に今後解体する方針を表明した後、12月には望遠鏡が崩壊する事故が起きた。日本をはじめ宇宙研究を進める各国にとって、「天眼」の重要性は高まることになる。FAST科学委員会理事の呉祥平(Wu Xiangping)氏は「天眼を世界に開放し『世界の巨大な目』となることは、人類運命共同体を構築するというわが国のコンセプトを反映している」と話す。

 4月1日からの申請では観測内容を限定せず、8月1日からは観測時間の10%を各国に割り当てる予定。「宇宙強国」を目指す中国が国際宇宙研究もけん引しようとしている。(c)東方新報/AFPBB News