複雑に機能する時計のムーブメントは、もはや小宇宙といっても過言ではない。スーパースポーツカーにとってエンジンが大切なように、時計選びもエンジン=ムーブメントがキモなのだ!

CARL F.BUCHERER(カール F.ブヘラ)/マネロ ペリフェラル
カール F. ブヘラのベーシックコレクションである「マネロ」に、第2世代へと進化した自社製ムーブメントを搭載。ペリフェラルローターの基本構造は踏襲しながら、フリースプラングや新しい耐衝撃装置を採用するなど、時計としての基礎体力を大幅に向上させている。大振りになったケースもバランスが良い。自動巻き。ステンレススティール、ケース直径43.1㎜、ケース厚11.2㎜、30m防水。税別84万円。

カール F. ブヘラ独自のペリフェラルローター。ムーブメント外周に配置するため、厚みが抑えられる。第2世代では耐衝撃装置のDSAが改良され、パーツ数もよりコンパクトになった。

CARL F.BUCHERER

腕時計がスタンダード化してゆく過程で、そのエンジン=ムーブメントに求められるようになった標準スペックのひとつに自動巻きがある。腕の動きを利用してローターを回転させ、動力源である主ゼンマイを巻き上げる機構は、今や当たり前の存在だ。

しかしムーブメントの上に巻き上げ機構を重ねる手法が一般的なため、多くのモデルでは厚みが増してしまう。今なおドレスウォッチに手巻きが多いのは、手巻きが持つ趣味性の高さだけが原因ではないはずだ。ムーブメントの厚みを増やさずに、自動巻き化を成し遂げる試みにはマイクロローターなどがあるが、効率を考えるならローターは大きな方がいい。

そのため考案された機構がペリフェラルローター(外周ローター)だったのだが、これがなかなかの難産だった。名だたる名門ブランドを尻目に、この実用化を果たしたのがカール F. ブヘラ。アイコンモデルの「マネロ ペリフェラル」は、大振りなケースサイズを活かしてペリフェラルローターを収納。厚みをぐっと抑えたことで、ドレスウォッチ然とした風格を手にしている。

第2世代へと進化した独自のムーブメントは、フリースプラング(自由振動ヒゲ)搭載と耐衝撃装置の改良で、より安定した精度を実現した。

文=鈴木裕之 写真=近藤正一
(ENGINE 2021年1月号)