【1月12日 AFP】欧州連合(EU)から完全に離脱した英国が、ミュージシャンのツアー時の査証(ビザ)を免除する協定についてEUと合意しなかったことについて、英バンド「レディオヘッド(Radiohead)」のトム・ヨーク(Thom Yorke)さんら大物アーティストから非難の声が上がっており、英政府は11日、EU側に責任があると主張した。

 ヨークさんはボリス・ジョンソン(Boris Johnson)政権を「腰抜け」と呼び、バンド「ザ・シャーラタンズ(The Charlatans)」のフロントマン、ティム・バージェス(Tim Burgess)さんは、政治家は「アーティストをさげすんでいる」と非難した。

 だが政府報道官は11日、責められるべきはEUだと主張。英国は「ビジネス目的の渡航者の一時的な移動に関する意欲的な取り決め」の一部として、ツアーを行うミュージシャンを対象にしたビザ免除協定の締結を働き掛けたが、EU側がこれを拒否したと説明した。

 高級紙インディペンデント(Independent)はEU筋の話として、英ミュージシャンの加盟国27か国での90日未満の滞在に関してはビザを免除するというEU側の代替案を英政府が拒否したと報じた。

 人気ボーイズグループ「ワン・ダイレクション(One Direction)」のルイ・トムリンソン(Louis Tomlinson)さんや元「ボーイゾーン(Boyzone)」メンバーのローナン・キーティング(Ronan Keating)さんらは、「制限のない文化的就労許可」を求める運動を支持するようファンに強く呼び掛けた。あるオンライン上の署名活動には、約25万人分の署名が寄せられている。

 ビザが免除されれば、英国のバンドメンバーやツアーに携わる技術者、演奏家、アーティスト、芸能人およびスポーツ関係の有名人がEU圏内を自由に移動できるようになる。

 英国のミュージシャンズ・ユニオン(MU)のホレイス・トゥルブリッジ(Horace Trubridge)事務局長は、「英音楽業界は新型コロナウイルスの流行で壊滅的な打撃を受けており、コンサートやツアー、フェスティバル、定期演奏会のキャンセルに終わりが見えない中(中略)この報道が本当ならば(中略)ほとんど信じられないことだ」と述べた。(c)AFP