【1月14日 東方新報】科学論文の数は、その国の研究開発の勢いを表す基本的指標だ。近年、中国の研究者による論文の質と量は米国に匹敵するようになり「米中2強時代」を迎えているが、論文の不正といった課題も残っている。

 中国政府直轄の中国科学技術情報研究院は昨年末、2019年の質の高い国際論文数において中国は世界2位になったと発表した。国際的な学術誌に掲載され、引用された数が多い論文19万661本を抽出。このうち1位の米国は6万2717本(シェア率32.9%)で、中国は5万9867本(31.4%)と続いた。大学別で見ると、1位の米ハーバード大学(Harvard University)の4413本に次いで清華大学(Tsinghua University)が2420本で2位。トップ10に清華大学、浙江大学(Zhejiang University)、上海交通大学(Shanghai Jiao Tong University)、北京大学(Peking University)の4校がランクインした。米国は臨床医学や基礎生命科学、中国は材料科学や化学、工学、数学の論文が多い。

「量」ではすでに中国は世界一となっている。日本の文部科学省が昨年9月に発表した「科学技術指標2020」によると、自然科学分野の論文数で中国は30万5927本を数え、40年にわたりトップだった米国の28万1487本を抜いて初の首位となった。論文シェアで見ると中国が19.9%、米国が18.3%。3位のドイツは4.4%にとどまり(日本は4位)、中国と米国が圧倒的に抜きんでている。中国の研究者数は世界トップの187万人、研究開発費は米国の60.7兆円に猛追する2位の58兆円。米国留学などで育った若い研究者が潤沢な研究開発費を使い、「質」と「量」の両面で論文のレベルを押し上げている。

 一方、中国科学技術情報研究院によると、昨年1~7月に国際的論文検索データベースSCI(Science Citation Index)から撤回された論文1143本のうち、34%に当たる388本が中国の論文だった。理由は「論文の盗用」や「データの改ざん・捏造(ねつぞう)」が目立つ。

 中国は歴史的に、SCIに登録された学術誌に論文を掲載することを重視してきた。過去に国内で論文の査読に適した人材が不足し、客観的評価基準が乏しかった経緯があったためだ。SCIに論文が登録されるかどうかで、研究への資金助成、昇進、学位授与などあらゆる方面に影響するため、論文の不正も一部で横行してきた。

 教育部と科学技術部は昨年2月、「SCIを研究者の評価基準として過度に使わないように」と大学などの研究機関に通達。「SCI至上主義」を改めるよう求めた。中国メディアは「論文の不正が横行するのは大学などが問題を内密に処理しようとするためだ。論文の不正が起きれば公開するシステムが必要だ」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News