【1月30日 AFP】生後わずか4か月で保護されたサイの子ども「ジェシー」は、肩から血を流し、心にも深い傷を負っていた。

 ジェシーは密猟者に母親を殺され、なたで追い払われて傷を負ったのではないかと保護した人々は考えている。

 幸いにも生き残ったジェシーは、親を失ったサイのリハビリを専門に手掛ける珍しい保護施設「サイの孤児院(Rhino Orphanage)」に来ることができた。

 この施設は南アフリカ北部リンポポ(Limpopo)州の森の中に隠れるようにある。周囲には数十の動物保護区があり、正確な場所は明かされていない。入り口は大きな金属製のゲートで守られている。

 創設者のアリー・ファン・デーフェンテル(Arrie Van Deventer)さんは「農場の労働者が密猟者に(この施設の)情報を提供すれば…年収を超える報酬を手にできるでしょう」と言う。そのためサイの孤児たちを守るには、セキュリティーと用心が鍵だ。施設の運営は個人的な寄付に頼っている。

■「私たちが母親」

 施設の使命は明確で、サイの子どもたちを救出し、回復させ、解放することだ。観光客は受け入れておらず、訪問者もほぼいない。サイと人間の接触は最小限に抑えられている。

 サイたちが「人間に慣れ過ぎてしまうと、野生に返すことが難しくなる」とファン・デーフェンテルさんは説明し、「安全上の理由で」一般公開もしていないと述べた。

 昼夜を問わずサイの面倒を見ているのは、スタッフ4人とボランティア2人。すべて女性だ。時には飼育舎で、赤ちゃんサイに添い寝することもある。

「私たちはこの子たちの母親です」というマネジャーのヨランド・ファン・デル・メルベ(Yolande Van Der Merwe)さん(38)によると、子サイたちは「ぬくもりと安心を求めて、すぐそばで眠る」という。この保護施設に来るサイの大半は、密猟者に親を奪われた子どもたちだ。

 サイの角はアジア各地で伝統薬として珍重されており、闇市場では角からとれるケラチン1キロ当たり11万ドル(約1100万円)を超える値が付くこともある。その角を取るために、サイたちは殺されている。

 サイの孤児たちは、敵から身を守れるほど強くなったとみなされる5歳になるまで施設で暮らす。そして近隣の動物保護区に放された後も保護活動家らが、サイたちの最新情報を施設に伝え続ける。(c)AFP/Gersende RAMBOURG