■「オリンピックおじさん」

 1992年、スペインのバルセロナにバックパック旅行したとき五輪に取りつかれた。開会式のチケットを安く入手。その雰囲気にのみ込まれた。

 翌日、同じ日本人の山田直稔(Naotoshi Yamada)さんとの出会いに恵まれた。1964年の東京大会以来すべての五輪を訪れていた山田さんは彼女の師匠となった。

「オリンピックおじさん」と呼ばれた山田さんは、トレードマークの金色のシルクハットをかぶり、石川さんと連れだってその後すべての夏季五輪を訪れ、友情の輪を広げた。だが山田さんは2019年に92歳で亡くなり、2度目の東京五輪を観戦する夢がついえた。

「とても残念です。東京大会が山田さんのオリンピックファンとしての人生の集大成になるはずでしたから」と石川さんは悔やむ。「レガシーと精神を受け継ぎたい。もちろん自分は山田さんにはなれない…バトンを渡されても、役割は違うのです」

 東京が2020年大会の開催地に選ばれたとき大喜びしたが、国内でのチケット購入が難しくなると分かっていた。

 第1次抽選で、石川さんは家族とともにそれぞれ1人当たりの上限60枚を申し込んだが、ことごとく外れた。第2次抽選で手にしたのは、全員でたった1枚。レスリングだった。

 その後、国内で販売されたチケットの18パーセントが払い戻されることとなったため、石川さんはもっと入手できると確信している。

 とはいえ、一番の心配は大会自体が開催されない可能性だ。