【2月13日 AFP】かつて存在したオマーンの村、ワディアルムル(Wadi al-Murr)は砂漠にのみ込まれ、その痕跡はほぼ残っていない。しかし砂に消えた集落を再び目にしようと、元住民や好奇心にかられた人々がその場所を訪れている。

 地元の長老たちは、「村の家々のすべては30年前、入り込んできた砂に襲われた。住民は家を捨てざるを得なかった」と振り返る。

 ところどころ現れている建物の上部や石造りの壁の一部が、かつてそこに住んでいた人々の存在を裏付けている。

 気候変動のあおりで、世界各地で砂漠化が進行しているが、被害を受ける人々は、ほぼなすすべがない。

 ワディアルムルの人々の大半は牧畜で生計を立てていたが、村を捨て、町や都市に移住する人々に加わらざるを得なかった。

■ありし日を懐かしむ

 ワディアルムルは首都マスカットから南西に約400キロの谷底に位置する。幹線道路からは遠く離れ、長いでこぼこ道を進まなければたどり着けない。電気も水道もない孤立した村だったこともあり、村は世間から忘れ去られた。

 それでも以前の住人はこの地を再び訪れるし、この地方で砂漠のトレッキングを楽しむ人々も同様だ。

 元住民のムハンマド・アルガンブシ(Mohammed al-Ghanbousi)さんによると、砂丘が動いたために、一度は砂に覆われてしまった住居の一部が再び姿を現した。この現象が、「石造りのために枠組みが残っていた家の元住民らが、過去を懐かしみ、村を訪れる」きっかけになった。

 さらに、「村は最近、トレッキングツアー(の目的地)にも加えられた。熱心な写真家らも引き付けている」という。

 最盛期の村には、約30戸の住居に150人ほどが暮らしていた。そんな村のモスクも、砂の中から再び姿を現している。