【1月8日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領に扇動されたデモ隊が連邦議会議事堂内に突入する事態はなぜ起きたのか、総勢2300人いる議会警察(USCP)はなぜ、デモ隊を逮捕するそぶりも見せず、たやすく中へ通してしまったのか。米首都ワシントンでは、怒りと不信の声が広がっている。

 上下院指導部は、2001年9月11日の米同時多発攻撃以来のあってはならない弱点が露呈したとして、デモ隊の突入を許した経緯の調査を要求した。

 昨年11月の米大統領選の結果を確定させる上下両院合同会議が開かれる1月6日に、「プラウド・ボーイズ(Proud Boys)」などの極右武装勢力(ミリシア)や極右陰謀論「Qアノン(QAnon)」の信奉者ら、筋金入りのトランプ支持者たちがデモを行うことについては、数週間前から対策を練ってきたと、警察と国防総省の関係者は言う。

 しかし、協議を重ねてきた関係者の誰も、デモ隊が議会を占拠する可能性は想定していなかった。

 7日に辞表を提出したスティーブン・サンド(Steven Sund)議会警察長官は、合衆国憲法で保障された言論の自由に基づく抗議デモに対しては「しっかりした対策があった」が、起きたのは「大規模な暴動で、憲法に基づくデモではなかった。犯罪的な暴力行為だった」と釈明した。

■出されなかった応援要請

 議事堂の周辺は議会警察の管轄下にあり、首都ワシントン全域を管轄する首都警察(Metropolitan Police)の大規模な熟練部隊は、要請がない限り出動できない。

 首都警察のロバート・コンティ(Robert Contee)本部長は7日の記者会見で、6日午後1時(日本時間7日午前3時)ごろに要請を受けて出動したが、その時点で既に議事堂は占拠されつつあり「状況はかなり悪かった」と説明した。

 首都で暴動が起きた際には州兵の応援派遣を指示する権限が市長にあるが、ミュリエル・バウザー(Muriel Bowser)市長は、6日に派遣要請は一度もなかったと明言。「議会警察も議会指導部も、州兵の応援を要請する決断を下さなかった。私には、軍や州兵に米議会の敷地への出動を命じる権限はない」と述べた。

 事実、首都に展開する州兵を統括するライアン・マッカーシー(Ryan McCarthy)米陸軍長官によると、関係者間で事前に重ねてきたデモ対応協議の場では、協力態勢の構築が何度も議題に上ったが、サンド長官ら議会警察側はそのたびに申し出を断ったという。

 議会に突入したトランプ支持者の中には、脅威として警戒対象になっているミリシアのメンバーも複数いた。だが、「米議会突入を企てていると示唆する情報提供はなかった」とコンティ本部長は認めた。

 マッカーシー長官は、昨年夏の反人種差別運動「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」のデモの際には治安部隊を派遣した内務省や国土安全保障省も、今回は一切、出動の要請をしなかったと述べている。(c)AFP/Paul HANDLEY