【1月9日 AFP】米首都ワシントンで6日、連邦議会議事堂に乱入した人々について、ソーシャルメディア上では急進左派の活動家ネットワーク「アンティファ(Antifa)」関係者だったとの主張が投稿されているが、実際にはドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領への支持を示す帽子をかぶったり、旗を掲げたりしたトランプ氏支持者らだった。アンティファ関与の証拠とされた写真に写る男性2人のうち1人はトランプ氏支持者で、もう1人はスキンヘッドと呼ばれる白人至上主義団体の関係者とみられる。

 アンチ・ファシズム(反ファシズム)を短縮したアンティファは、組織化されていない運動で、オンラインや公の場でファシズムと闘うことを目的として掲げており、あと2週間で退任するトランプ大統領を含む米保守派の格好の攻撃対象となっている。

 トランプ氏支持派の弁護士、リン・ウッド(Lin Wood)さんは6日、ツイッター(Twitter)に2枚の写真を投稿し、「きょう連邦議会に暴力的に突入し、危害と損害を与えたのはトランプ氏の支持者ではなく、アンティファであったことを示す決定的証拠写真。だまされてはいけない。トランプ氏の支持者は平和的だ。過去数か月にわたり私たちの街で暴力を生み出しているのはアンティファだ」と書き込んだ。

 ウッドさんが共有した写真のうち1枚はAFPが6日に議事堂内で撮影したもので、ひげをたくわえた男性が写っている。男性の身元は不明だ。もう1枚の写真にも容姿が似た男性が写っており、その下にはアンティファ系ブログ「phillyantifa.org」のURLが添えられた。

 写真は実際にこのブログで2018年9月に投稿されたものだが、それはこの男性がアンティファに関与しているためではない。ブログはアンティファが敵視する右派グループの情報を投稿しており、この写真が使われた投稿では、男性の名前はジェイソン・タンカースリー(Jason Tankersley)で、「メリーランド・スキンヘッズ(Maryland Skinheads)の創設者で、長年ネオナチ(Neo-Nazi)として活動しており、ここ数年は自身のイメージ回復に取り組んでいる」と紹介されている。

 米人権団体の南部貧困法律センター(Southern Poverty Law Center)のウェブサイトに掲載された写真(撮影日不明)では、タンカースリーさんは「メリーランド州スキンヘッズ(Maryland State Skinheads)」のメンバーだとされているが、グループ内での役割は言及されていない。

 ウッドさんのアカウントはその後、ツイッターにより凍結された。同様の主張はフェイスブック(Facebook)やインスタグラム(Instagram)にも多数投稿されている。

 ソーシャルメディアではさらに、角が生えた毛皮の帽子をかぶっている男性が、人種差別抗議運動「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」に参加したこともあるアンティファ関係者だとする説も出回っている。この男性もまた、議事堂内に侵入した際の姿をAFPが撮影していた。

 AFPが昨年11月5日にアリゾナ州フェニックス(Phoenix)で撮影した写真のキャプションでは、男性が「トランプ氏支持者の霊媒師(シャーマン)でコンサルタント」を自称していると説明しており、写真で男性はトランプ支持者らが信奉する陰謀論「Qアノン(QAnon)」のプラカードを手にしている。

 男性はAP通信(Associated Press)が同月7日に撮影した写真にも写っており、男性はフェニックスで開かれた集会で演説するトランプ氏支持者のジェイク・アンジェリ(Jake Angeli)さんと紹介されている。

 共和党のマット・ゲッツ(Matt Gaetz)下院議員(フロリダ州選出)は米保守紙ワシントン・タイムズ(Washington Times)の記事を証拠として、議事堂乱入にはアンティファが関与していたとの説を拡散した。

 しかし該当記事は後に、次のように訂正された。「この記事では当初、6日に議事堂に侵入した人々の中にアンティファのメンバーがいることが顔認識ソフトウエアの『XRビジョン(XRVision)』によって特定されたという誤った情報を記載していました。XRビジョンはアンティファのメンバーを特定していませんでした。ワシントン・タイムズはこの間違いについて、XRビジョンにおわびします」 (c)AFP