【1月8日 People’s Daily】近頃、中国科学技術大学(University of Science and Technology of China)の潘建偉(Pan Jianwei)氏・陸朝陽(Lu Chaoyang)氏らの研究者によるチームと中国科学院上海マイクロシステムおよび情報技術研究所、国立パラレル計算機エンジニアリング研究所が協力して、76の光子を用いた量子コンピューターのプロトタイプ「九章」を構築した。ボーズ粒子サンプリングの問題を計算したところ、「九章」は5000万のサンプルを200秒で処理した。これは世界最速のスーパーコンピューターでも6億年かかる計算である。これは中国が初めて実現した、「量子計算の超越性」である。このブレークスルーによって、中国は世界で2番目に「量子超越性」を実現した国となった。成果は12月4日に「サイエンス(Science)」誌で発表された。

「量子計算の超越性」とは、新しくできた量子コンピューターの計算能力が、最も処理能力の高い従来型スーパーコンピューターを超え、量子コンピューターの優越性を証明し、将来的に多くの部分で従来型コンピューターの閾値(いきち)を超えるであろうことを指す。

「ビッグデータ時代にあって、世界中のデータ量は増え続けており、2年ごとに倍になっています。膨大なデータを引き出せないなら、意味はないのです」と、潘建偉氏は言う。目下、コンピューターの従来型の発展モデルは限界に近づいており、スーパーコンピューターのエネルギー消耗は莫大(ばくだい)なものである。「九章」を世に出す意義は、消耗エネルギーの増加をくい止めることと計算能力の向上にある。

 目下、量子コンピューターの開発はすでに世界の科学技術の最前線における最大の挑戦のひとつとなっており、世界の開発競争の焦点となっている。去年、グーグル(Google)は53の超伝導量子ビットコンピューター「シカモア(Sycamore)」を発表し、とある数学的計算について当時世界最速のスーパーコンピューターをはるかに超える効率をたたき出し、率先して「量子優越性」を実現した。「九章」はボーズ粒子サンプリングの解を非常に速く出すことを実現した。

 陸朝陽氏が説明するには、「シカモア」と比べて「九章」は計算速度がさらに速くなっており、環境適応性はさらに高く、技術のセキリュティー問題を克服したという3つの利点がある。

 現在、「九章」に基づいたボーズ粒子サンプリング計算はグラフ理論・マシンラーニング・量子化学などの領域で潜在的な応用法があるとされ、これは後続の発展において重要な方向性といえる。潘建偉氏のチームは、たとえ「九章」の計算力が人を驚かせるものであったとしても、量子コンピューターの第一段階でしかないと言う。「15年から20年努力を続けて、汎用(はんよう)性のある量子コンピューターを開発し、パスワード分析・気象予測・薬品の設計など非常に広い問題の解決に利用したいと思います」

「サイエンス」誌の査読者の評価では、これは「最先端の実験」「重大な成果」である。「量子優越性」の実験は一朝一夕でできる仕事ではないが、最終的には、量子パラレルは古典的コンピューターが及ぶべくもない計算力を手にするだろう。(c)People’s Daily/AFPBB News