過去13年間分の雑誌記事をWEBで再掲載している連載です。毎週水曜日12時更新。

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18年目の選択

95年からメルセデス・ベンツ320TEに乗り続けてきた京都の田中さんを訪ねました。

「44号車のリポートを毎号楽しみにしています。18年間乗ってきたメルセデス・ベンツ320TEの調子が悪く、手放すか、乗り続けるか、迷っております……」

編集部に一通の手紙が届いた。差出人は京都の田中靖造さん。同封の写真で見る限りクルマはピカピカ。18年を320TEとともに歩んできたお話は面白いに違いないと考え、44号車で京都に向かった。

嵯峨嵐山に建つ世界遺産、天龍寺の近くにお住まいの田中さんは、同寺の境内が子供のころの遊び場だったという根っからの京都人である。来年喜寿を迎えるとは思えないかくしゃくとした方で、大のクルマ好き。到着すると、待ってましたとばかりに、田中さんはこれまで乗ってきたクルマのアルバムを開いた。車歴がすごい。1935年のダットサンに始まり、ホンダS600、ジープ(J30)、三菱500、BMW2002、BMW3.0CSA、BMW M5、トヨタ・クラウン、日産ブルーバードSSS、ミニ、シトロエン2CV、ポルシェ911……。なんと、これまで80台近くを乗り継いできたという。

「トミーカイラの創業者、冨田(義一)さんと昔から友達で、彼が仕入れたクルマを買っては売りを繰り返してたんです。一番短いのは2日半ですわ(笑)」

320TEは1995年に新車で購入した。

「ドイツ製サルーンはずっとBMWばかりだったので、家内は静かな320TEこそ高級車だと喜びまして。仕事で使ったり、週末は趣味で始めたヨットを係留してあるハーバーに行ったりと大活躍でした」

田中ご夫妻と愛車2台。田中家とともに44年を歩んだ赤の日産サニー・クーペがあまりにも綺麗で驚いた。現在11万5000km。

荷物がたくさん積めることに加え、京都の狭い道でも小回りが利く320TEは本当に便利だったという。

ちょっとだけ試乗させていただいた。内外装ともに美しい。エンジンの状態も悪くないように感じた。

「ところが、エンジンのハーネスがダメなようで、頻繁にストールしてしまうんです。やはり諦めようかと」

しかし、寂しい話だけではない。田中家には結婚したときに奥様用に買った日産サニー・クーペ(1969年式)がある。これでクラシック・カー・ラリーに出ようと田中さんは思っている。

昭和28年に買ったラジコン飛行機がエンジンとの出会い。以来約80台の内燃機関と付き合ってきた。320TEとの付き合いが最長である。

■44号車/メルセデス・ベンツ300TE
MERCEDES-BENZ300TE
購入価格:168万円
導入時期:2008年9月
走行距離:17万9550km

2008年にENGINE編集部は「長期テスト44号車」としてメルセデス・ベンツ300TE(1992)を購入。1984年にデビューしたこの124型は「消耗部品をちゃんと交換していけば新車同然の状態で長く使える」と言われた名車で、それを検証すべく連載スタート。購入時の走行距離が3万4000㎞だった44号車は、12年後の2019年に走行距離30万キロを突破し、いまだ現役です。

(ENGINE2013年9月号)