■より危険なのか?

 現時点で変異株が従来の株よりも強力だということを示唆する証拠はないが、新型コロナウイルス感染症で入院治療を必要とする患者が、割合は少なくても常に一定数いることを踏まえると、感染しやすくなれば、それだけで極めて大きな問題を引き起こす。

「感染性が高まれば、その分、罹患(りかん)率が大きく上昇し、たとえ致死率が変わらなくても、医療体制が著しく逼迫(ひっぱく)する」とコワニャール氏は述べた。

 英ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院(LSHTM)の疫学者、アダム・クチャルスキー(Adam Kucharski)氏は、感染力が50%高いウイルスは、致死率が50%高いウイルスよりも「はるかに大きな問題をもたらす」と指摘する。

 同氏はツイッター(Twitter)で、新型コロナウイルス感染症のような病気で実効再生産数(R)が1.1(1人の患者から平均1.1人に感染)と仮定した場合、致死率0.8%では死者数は1か月で129人となり、致死率が50%高まると193人になると説明。だが、致死率0.8%でも、感染力が50%増したウイルス株では、死者は978人になると計算している。

 初期段階の研究では、英国の変異株は若者に非常に感染しやすく、そのため学校を閉鎖すべきかどうかという問題が持ち上がっている。

 LSHTMの研究は、昨年11月に英国全土で導入されたレベルのロックダウン(都市封鎖)では、「小中学校から大学まで閉鎖しない限り」変異株の拡散を抑制するには不十分だろうと結論付けている。

■ワクチンは変異株にも効く?

 米製薬大手のファイザー(Pfizer)や同モデルナ(Moderna)が開発したメッセンジャーRNA(mRNA)を用いたワクチンは、まさに新しい変異株の中で変異を起こしている部分であるスパイクタンパク質を人間の体内で作らせる仕組みになっている。

 ECDCは、ウイルスの変異がワクチンの有効性に影響するかどうかを判断するのは時期尚早だとの見方を示している。

 一方、独製薬ビオンテック(BioNTech)は、必要に応じて、変異株に効果がある新しいワクチンを6週間以内に開発することは可能だとしている。

■私たちにできることは?

 コワニャール氏は、変異株を根絶するのは不可能だが、各国政府が目標とすべきこととして、変異株の拡散を「最大限遅らせる」ことを挙げる。

 新たな変異株がまだ確認されていない国々で拡散を遅らせる取り組みとしてECDCが推奨しているのは、新型ウイルス自体の流行初期と同じく、入国者の検査と隔離、濃厚接触者の追跡、移動制限などだ。

 運が良ければ、既存の一部のPCR検査で英国の変異株を検出できる場合もある。

 そのため、仏政府顧問の疫学者アルノー・フォンタネ(Arnaud Fontanet)氏は、検査対象を拡大し、(感染症の)発生動向の調査を「極めて積極的に行うべき」だと主張している。

 米疾病対策センター(CDC)のヘンリー・バルケ(Henry Walke)医師は、「新型コロナウイルスの感染拡大を遅らせるため、私たちはさらに気を引き締めて予防策を取っていく必要がある」と述べ、その方法として、マスクの着用、同居人以外とは6フィート(約183センチ)以上の対人距離を確保すること、人混みを避け、室内を換気し、手洗いをすることを挙げている。(c)AFP/Amélie BOTTOLLIER-DEPOIS