【1月7日 AFP】シリア北東部、ジャグジャグ(Jaghjagh)川の岸の薄暗くほこりっぽい工房で、古いろくろを操り、粘土からさまざまな形を作り出す陶芸家、ミサク・アントラニク・ペトロス(Misak Antranik Petros)さん(85)。

 アルメニア系シリア人のペトロスさんの一族は、450年以上も陶芸を続けているという。「この職業は代々受け継がれてきたものだ。まるで遺産のように」。今はペトロスさんの息子が後を継ごうとしている。

 工房があるのは、シリア北東部のクルド人支配地域の中心都市カミシリ(Qamishli)近郊だ。泥れんが造りの古い家屋の中に、つぼ、道具類、古典的な形の花瓶などが散らばり、そのほとんどがほこりをかぶっている。

 ペトロスさんと2人の息子は、古いまきストーブで暖まった湿気の多いこの空間で、一日の大半を過ごす。「手から粘土を洗い落とすのは好きじゃない。この質感が好きだ」とペトロスさんはAFPに語った。

 ペトロスさんはまだ十代の時に、病気の父親に代わって家業の陶芸を継いだ。その後、陶芸を極め、現在は技の伝承に熱意を注いでいる。

「工房の扉が開いていて、息子が働く姿が見える時は幸せだ」と言うペトロスさん。「この技術は保存する価値がある」

 シリアでは9年間に及ぶ内戦で38万7000人以上が死亡し、数百万人が避難を余儀なくされたが、ペトロスさん一家の自宅と工房はほぼ無事だった。

 2人の息子、アントさんとエレバンさんのうち、43歳のアントさんがペトロスさんの下で修業し、プロの陶芸家として後を継ぐ見込みだ。ペトロスさんはアントさんについて、「ピンと張ったロープの上を歩く」空中ブランコ師のような「バランスが両手に必要だ」と語った。

 父親が見守る中、ろくろの前に座るアントさんは、慣れた手さばきで粘土を花瓶の形にしていく。アントさんはとにかく陶芸に夢中で、「手が寂しくなるから、2日と離れられません」と言う。そして、「もし神が私に子どもを授けてくださったら、父が私に教えてくれたように、自分も子どもに陶芸を教えるでしょう」 と語った。

 映像は2020年12月に取材したもの。(c)AFP