■「被害者を責める」

 公式資料によると、児童に対する強姦・性的虐待はフィリピンで頻発しているという。

 1時間に1人の女性もしくは子どもが強姦されている、とリサ・ホンティベロス(Risa Hontiveros)上院議員は、「女性に関するリソースセンター(Center for Women's Resources)」の統計を引用して語る。犠牲者の10人に7人は子どもで、大多数が女子だという。

 ユニセフによれば、13~17歳の児童の5人に1人は性的暴力を経験し、25人に1人は幼少期に強姦されている。しかし成人の加害者が合意の上の性交渉を主張できるため、訴追は難しいと、人権団体「子どもの法的権利・発展センター(Children's Legal Rights and Development Center)」のロウェナ・レガスピ(Rowena Legaspi)代表はAFPに述べた。12歳の少女が「合意するなんてあり得ますか」。

 提出された法案は、そうした行為を自動的に違法とし、それに対し終身刑を科す。ただし、年齢が近い若いカップルは罰せられない。

 数か月内に上院で承認され、ロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領の署名で法制化される。しかし、さらなる施策が必要だと活動家は主張する。

 国際人権組織ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch)のカルロス・コンデ(Carlos Conde)氏は、「幼いころからの」年相応の性教育が必要だと訴える。さらにセックスを安全にし、予期せぬ妊娠を防ぐための情報やサービスも必要だ。

 レガスピ氏は、一部の検事や裁判官に見られる性差別的で「被害者を責める」態度を改めるべきであり、何年もかかる強姦事件の裁判開始を早めるべきだと語る。