【1月4日 People’s Daily】池と数本の木の切り株。切り株の穴の中には鳥が好んで食べるチャイロコメノゴミムシダマシ。池から10メートルほど離れたところには細長い建物。建物の中には十数脚の椅子。

 建物の中から鳥がエサを探したり、遊んだりする様子を撮影することができる。雲南省(Yunnan)盈江県(Yingjiang)太平鎮(Taiping)雪梨村(Xueli)の石梯では、ここは「鳥の池」と呼ばれている。

 石梯ではバードウオッチングは「豊かになる」という意味で使われる。バードウオッチャーがここで鳥を撮影しようとすると、場所代に60元(約950円)、弁当が20元(約320円)、1泊すると100元(約1600円)。これに機材運搬の労務費を加えると、経営者にとってはかなりの収入になる。

 石梯に住む蔡伍(Cai Wu)さんは貧困戸に認定されていた。1家5人の収入は10ムー(約67アール)の土地でのコウボウソウ栽培だけに頼っていた。1人当たりの年収は1000元(約1万5800円)に届かなかった。変化は2015年の11月に起きた。蔡さんは知人とともに「鳥の池」を2つ作った。翌年末、貧困を脱却した。

「普通の観光客とは違い、バードウオッチャーは数日間滞在する。長い場合は、撮りたい鳥を撮るために1、2か月間滞在することもある」と語る蔡さん。2017年には自動車を買い、バードウオッチ・ガイドになった。バードウオッチャーを車に乗せてあちこちの「鳥の池」を回ったことで収入はさらに増加。年収は6万元(約95万円)余りになった。「思いもよらなかった。どこにでもいる小鳥が金づるになるなんて!」と蔡さん。

 盈江県バードウオッチ協会の班鼎盈(Ban Dingying)会長によれば、石梯は銅壁関省級自然保護区近くにあり、熱帯雨林の生態系の保存状態が良好だ。鳥類の種類もとても豊富で、これまでに350種余りが確認されている。このため多数のバードウオッチャーが訪れており、昨年は2万人を超えた。

 石梯は中国とミャンマーの国境地帯にあり、住人は85戸の363人。チンポー族やリス族が住む少数民族の村だ。住人たちは木を伐採して開墾したり、狩りをしたりして暮らしていた。貧困から脱却できないまま、生態系は破壊されていった。2016年の時点で貧困戸は43戸だった。

 近くの保山市(Baoshan)のバードウオッチングが話題になると、盈江県の幹部がこれを視察してひらめいた。「バードウオッチングなら盈江でも大丈夫だ。しかも盈江には、人気のサイチョウもいる」

 盈江県は2015年、貧困脱却活動と結び付け、大衆を指導しながらバードウオッチング産業を育てた。これに伴い、住民も鳥を愛し、保護するようになり、一度はいなくなったサイチョウも石梯に飛来、住み着いた。石梯はいまでは、国内で最も容易に野生のサイチョウを観察できる場所になった。(c)People’s Daily/AFPBB News