【12月31日 AFP】新型コロナウイルスのワクチン接種が始まっているフランスで、そのペースが遅いとして、研究者らや野党から政府を批判する声が上がっている。ワクチン接種に懐疑的な国民が多いことも、遅れの一因となっている。

 フランスは27日、欧州連合(EU)の他の加盟諸国と共に、米製薬大手ファイザー(Pfizer)と独製薬ベンチャーのビオンテック(BioNTech)が共同開発したワクチンの接種を開始。高齢者施設の入所者らが、優先接種の対象となっている。

 ドイツでは既に4万2000人が接種したのに対し、フランスでは最初の3日間で接種を受けた人は100人に満たず、政府の慎重姿勢を疑問視する声が上がっている。

 全国がん連盟(National League against Cancer)を率いる著名な遺伝学者のアクセル・カーン(Axel Kahn)氏は30日、ラジオ局ヨーロッパ1(Europe 1)に対し、フランスの戦略は「ここまで危機的な状況にはそぐわない」と指摘した。

 パリのジョルジュ・ポンピドー病院(Georges Pompidou Hospital)で救急医療の責任者を務めるフィリップ・ジュバン(Philippe Juvin)氏も、フランスには全国規模のワクチン戦略がないように見えると述べている。

 ジュバン氏は、テレビ局Cニュース(CNews)に対し「私個人はワクチン接種を受けたい。先例となり、ワクチンでは死なない、死ぬのは新型ウイルス感染症の方だと人々に示したい。死ななかったとしても、重症化することを知ってほしい」と語った。

 世論調査会社イプソス(Ipsos)が世界経済フォーラム(WEF)と共に行った世論調査では、ワクチン接種を希望するフランス国民の割合はわずか40%で、英国(77%)や米国(69%)などの他の先進国に比べて著しく低いことが明らかになっている。

 国営放送フランス2(France 2)に出演したオリビエ・ベラン(Olivier Veran)保健相は、1月末までには他の国々に追い付くとの見通しを示した。

 ある保健省職員は、ソーシャルメディア上の批判について「われわれが始めたのは100メートル走ではない、マラソンだ」と反論した。

 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は27日、ワクチン普及に寄与した同国の19世紀の科学者ルイ・パスツール(Louis Pasteur)に言及し「われわれを導くべきは理性と科学だ」とツイッター(Twitter)に投稿。「ワクチン接種は強制ではない。科学者と医師らを信頼しよう」と呼び掛けた。(c)AFP/Stuart WILLIAMS