【12月30日 People’s Daily】中国西部の崑崙山脈を越えてタンラ山近くに向かい、懐かしい草原を見渡すと、ナオブ・サンジョさんの心に言葉に表しがたい喜びが広がった。彼は16年前、家族と青海省(Qinghai)ゴルムド市(Geermu)南郊の新しい村に移住するまで、青海省西モンゴル族チベット族自治州タンラ山鎮に住んでいた。

 この地域は長江、黄河、瀾滄江(らんそうこう)の源流にあたり、三江源地区は「中華の水塔」と称されている。一帯の生態系を保護する「三江源国家公園」プロジェクトが試行されて以来、ナオブ・サンジョさんは自然保護管理員を務めている。

「タンラの地を守ることは、草原に生まれた者の責任であり、義務です」。故郷を離れ十数年、ナオブ・サンジョさんは都会で平穏な暮らしをしていたが、自然保護管理員の仕事を知り、すぐに名乗りを上げた。

 一人前の管理員になるため研さんを積んだ。チベット語と漢語(中国語)のバイリンガルとなり、野生希少動物の知識を蓄え、赤外線カメラの使用方法を学んだ。月に1度の草原パトロールでは、草地が保全され牧畜とのバランスが取れているか確認し、自然破壊行為を食い止め、野生動物の群れのデータを取り、住民に向けて生態系保護の周知徹底に努める。「草原の環境はどんどん良くなっていますが、常に監視を怠ってはいけません」

 2005年に三江源生態保護プロジェクトが始まって以来、砂漠化した地域の復元、牧畜をやめて草原に戻す事業、牧畜民の移住などの取り組みが成果を挙げている。試行開始から5年が経過し、三江源の水源涵養(かんよう)量は年平均6%以上増加。草地被覆率は10年間で11%増え、草地年間生産量も30%以上増えた。水資源量は80億立方メートル近く増え、浙江省(Zhejiang)にある西湖560個分に相当する。

 現在、三江源国家公園にいるナオブ・サンジョさんのような自然保護管理員は1万7211人を数え、各地に管理チームをつくっている。

 生態環境の改善は牧畜民にも収益をもたらしている。地元政府から年間3億7200万元(約59億円)の補助金が支給され、各世帯の年収は平均2万1600万元(約34万円)の増収となっている。

 三江源国家公園の赫万成(He Wancheng)管理局長は「自然保護管理員の仕事により牧畜民が国家公園の建設に積極的に関わるようになった上、貧困解消にもつながっている」と意義を語る。(c)People’s Daily/AFPBB News