【1月17日 AFP】シリア人のラニア・カタフ(Rania Kataf)氏(35)は、内戦で荒廃した祖国の首都ダマスカスの旧市街の路地を散策しながら、伝統的な住宅を隅々まで写真に収めている。こうした家々が危機的状況に陥っている様子を目の当たりにし、建築物を後世に残すために電子情報としてアーカイブ化する取り組みを始めたのだ。

「第2次世界大戦(World War II)中に欧州の写真家たちが都市の建造物を記録して、その一部を後に再建につなげたことに着想を得た」と話す。

 ダマスカス旧市街は、100年余りの歴史を持つ優美な家々で知られる。大抵の場合、2階建ての建物が四角い中庭を囲み、緑が茂る庭の中心には石を彫り込んで造った噴水がある。

 ダマスカスの大部分は、10年近く続く内戦による破壊を免れたが、こうした伝統的な家屋のいくつかは所有者に放置されたままになっているか、戦闘による被害を受けている。

 カタフ氏が2016年にフェイスブック(Facebook)上に作成したグループ「ダマスカスの人々(Humans of Damascus)」には、2万2000人を超えるシリア人が写真を投稿している。

「何かを記録するのに専門家である必要はない」とカタフ氏は言う。

 国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)は2013年、ダマスカス旧市街やアレッポ(Aleppo)、古代都市パルミラ(Palmyra)など、シリアの世界遺産(World Heritage)全6か所を「危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産、World Heritage in Danger)」に登録することを決定した。

 レバノンの首都ベイルートで栄養学を学んだカタフ氏は、シリアの他の地域で見事な建造物が内戦によって損壊または破壊されるのを目にして居ても立ってもいられなくなったと話す。

「ダマスカス旧市街でも同じことが起こるのではないかと恐ろしくなった。それで、できるだけたくさんの(建物の)詳細を記録し始めた」とカタフ氏は話した。