【12月31日 CNS】中国・山東省(Shandong)では、生活が困窮している人に無料で食事を提供する料理店がある。無料メニューを「A定食」と命名。希望者は店側に小声で頼めば、他の客と同じように注文しているように見える。

 山東省の飲食企業・凱瑞商業集団傘下の有名料理店「老牌坊(Laopaifang)」は、紅焼牛肉麺(牛肉の煮込みラーメン)と豆腐の煮込みを「A定食」として提供している。同グループマネジャーの侯明敬(Hou Mingjing)さんは「他の都市でこうしたサービスをしている店があると知り、私たちも企業の社会的責任を果たすため、始めました。A定食は1週間で10人以上が利用しています。私たちのチェーン店などで求人情報がある時は勤め先も紹介しています」と話す。

 A定食を利用したある男性は「新型コロナウイルスの影響で仕事がなくなった時、店の張り紙を見てA定食をいただきました。お店は私にアルバイトまで紹介してくれました。日当をもらった翌日、店に来てA定食分の代金を払いました。私もこれから努力して社会に恩返ししていきたい」と話していた。

 山東省・済南市(Jinan)の繁華街でラーメン店を構える女性の陳晴(Chen Qing)さんも、無料で紅焼牛肉麺を提供している。「私が10年前に済南に来てアルバイトを始めた時、多くの人に助けられました。1年半前に店をオープンし、今度は私が人を助ける番だと。ボロボロの服を着た若者や障害者、高齢者の方などがいらっしゃいます。自分が助けられた時のことを忘れず、真心の経営を続けます」と力強く語る。

 山東大学(Shandong University)社会福祉学部の高鑒国(Gao Jianguo)教授は「A定食という命名は、サービスを受ける側の尊厳を配慮した良い試みだ。企業の社会的責任感や社会の福祉意識を広げることにもつながる」と話している。
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