【12月28日 AFP】インドの警察当局は27日、パキスタンとの係争地カシミール(Kashmir)地方のインド支配地域で、民間人男性3人の遺体に武器を仕込んで武装勢力の戦闘員を銃撃戦で殺害したように偽装したとして、インド陸軍の将校ら3人を殺人や共謀の罪で起訴したと発表した。

 連邦政府直轄地ジャム・カシミール(Jammu and Kashmir)のアムシポラ(Amshipora)村で7月に起きたこの事件では、軍は当初、3人は銃撃戦で死亡し、遺体から武器3点が押収されたと発表。カシミールのインド人住民らの激しい怒りをかき立てた。

 3人の遺体は人里離れた国境近くに急いで埋葬された。だが、事件から1か月後、ソーシャルメディアで拡散されていた写真を3人の家族らが見つけ、疑惑が表面化した。家族によると3人は、リンゴ園での仕事を求めて現地を訪れていただけの労働者だという。

 これを受け、陸軍と警察がそれぞれ独立した調査を行う異例の事態となっていた。

 27日夜の警察発表によると、ブペンドラ・シン(Bhoopendra Singh)大尉は2人の協力者と共に、「遺体から身元の分かる品をはぎ取った後、違法入手した武器や物品を仕込み、戦争用の武器を所持した筋金入りのテロリストに見せ掛けた」とされる。

 シン大尉は殺人罪と共謀罪で起訴されたが、身柄は軍の拘束下にある。また、民間人2人は警察が勾留している。この2人は「情報提供者」でもあるという。

 一方、軍は先週、事件に関する証拠集めが終了し、追って処分を行うとのみ発表した。

 殺害された3人の遺体は9月に掘り起こされ、DNA検査を行った後で家族の元に帰された。

 ジャム・カシミールでは1990年に施行された非常事態法に基づき、連邦政府の同意なしに軍人を民間法廷で裁くことはできない。現地警察はこの30年間、数十回にわたって治安部隊の行為を捜査した後に連邦政府に許可を申請してきたが、裁判が認められた例はない。(c)AFP