【1月10日 AFP】中国人のリウ・ジュン(Liu Jun)さん(28)は、以前から「留歌(Amy)」という名の10代の赤毛のアイドル歌手のファンで、もらったサインを宝物にしている。だが、留歌はバーチャルアイドル。デジタルの世界の中にしか存在しない。

 留歌のコンサートやファンのイベントにこの数年間で10回以上参加してきたリウさんは、バーチャルアイドルの大きな特徴は現実の人間だったらどういうふうか分からないことだと言う。「だからこそ、なおさら想像が膨らむ」と語る。「バーチャルアイドルは不滅だ。イメージさえあれば、心の中で永遠に存在し続ける」

 留歌は、バーチャルアイドルのスター発掘番組「跨次元新星(Dimension Nova)」で有名になった。バーチャルアイドルが、実在する有名人3人の審査員の前でダンスや歌を披露する番組で、こういった企画は世界初だという。

 ファンイベントの一つでは、ファンは高さ2メートルのスクリーン越しに留歌と会話し、リウさんはスクリーンにつながれたプリンターで留歌の「サイン」をもらった。

 バーチャルアイドルのコンセプトの起源は日本だが、こうしたデジタルのアバターが今や中国のメディアの配信にじわじわ浸透し、テレビ番組や広告掲示板、ニュース番組にまで登場している。ファン層も拡大しつつあり、中国の動画配信大手、愛奇芸(iQIYI、アイチーイー)の調査によると、ファンは全国で推定3億9000万人に上る。

 番組に出演するバーチャルスターは、コンピューターアニメーションと生身の俳優を組み合わせてつくられる。留歌の衣装、ヘアスタイル、容姿はアニメーターが創作し、留歌役の俳優がそれ以外をすべて引き受ける。

 リアルタイムのモーションキャプチャーとレンダリング技術で、俳優の動きがスクリーン上のアイドルに反映される。留歌役の俳優はパフォーマンスに備え、ダンスの特訓を受けなければならない。

 だが制作者らは、アイドルの背後にいる俳優の存在について一切語らないようにしている。