【12月28日 AFP】スペインで27日、新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。最初に接種を受けたのは高齢者施設に暮らす96歳の女性で、接種の模様はスペインの公共放送TVEで放映された。

【解説】コロナ変異種の封じ込めは可能 疫学専門家

 最初にワクチン接種を受けたのは、同国中部グアダラハラ(Guadalajara)にある高齢者施設ロス・オルモス(Los Olmos)に入所しているアラセリ・ロサリオ・イダルゴ・サンチェス(Araceli Rosario Hidalgo Sanchez)さんで、接種を終え何も感じなかったと笑顔で話した。白髪のショートヘアのサンチェスさんは接種を受けた後、黒いジャケットをゆっくりと羽織り、歩行用の補助具を使ってその場を後にした。接種2人目は介護者のモニカ・タピアス(Monica Tapias)さんで、ペドロ・サンチェス(Pedro Sanchez)首相はツイッター(Twitter)に「アラセリとモニカはきょうの希望に満ちた新しい一歩を体現している」と投稿した。

 欧州医薬品庁(EMA)は21日、米製薬大手ファイザー(Pfizer)と独製薬ベンチャーのビオンテック(BioNTech)が共同開発したワクチンを承認。以降、欧州連合(EU)加盟の27か国でこのワクチンの接種が進められるようになった。

 高齢者施設ロス・オルモスがスペイン全土でのワクチン接種計画の先駆けとなったのは、同施設がファイザーの倉庫近くに位置することが理由。この倉庫には26日、国内各地への配送に先立ち、ベルギーからワクチンが届いていた。同施設では入所者や従業員の中で、新型ウイルス感染は確認されていない。同施設所長のマリナ・バディージョ(Marina Vadillo)さんは24日、「私たちがスペインの全高齢者施設を代表していることは、私たちにとって誇りと大きな喜びの源」だと話した。

 スペイン政府は来年6月までに最高2000万人へのワクチン接種を目指しており、まずは2月末までに250万人への接種を目標とする。感染リスクが高い人に加え、介護施設の入所者や医療従事者など新型ウイルスに感染する恐れが非常に高い人を優先して接種を進める方針だ。スペインは欧州で新型コロナウイルスの被害が最も大きい国の一つで、感染者数は180万人に上り、死者数は4万9000人に迫る。(c)AFP