■遺産登録に取り組む「時が来た」

 ガイドのポリフコさんは、遺産登録によって原発周辺にある旧ソ連時代の崩壊するインフラの保存に当局者らが確実に取り組むと考えている。「どれもこれも何らかの手入れが必要です」

 ウクライナのオレクサンドル・トカチェンコ(Oleksandr Tkachenko)文化相も同じ意見だ。昨年、当地への観光客は過去最多の12万4000人に上り、そのうちの10万人は国外からの訪問者だった。原発を舞台にした米テレビドラマシリーズ「チェルノブイリ」の影響が大きかった。

 国外からの観光客が増えたことは、チェルノブイリが「ウクライナ人だけではなく、全人類にとって」重要であることを証明しているとトカチェンコ氏はAFPに語った。また、遺産登録により立ち入り禁止区域が、原発事故の再発に警鐘を鳴らす「記憶すべき場所」になると話し、「訪問者は受け入れるべきだが、単なる探検家のための冒険の目的地にしてはならない」と続けた。

 ウクライナ政府は、登録を求める対象物についての提案を3月までに行う予定だが、登録の最終決定については、2023年までかかる可能性がある。

 チェルノブイリ原発は事故後、残った3基の炉で発電を続けたが、2000年の12月15日に閉鎖された。2016年には、4号炉を覆う巨大な防護ドームが完工し、ユネスコの肩書が新たな優先事項になったとトカチェンコ氏は話す。原発跡地がこの先100年安全となり、世界遺産登録で年間訪問者が100万人まで増加すると、同氏は期待を寄せる。

 そうなれば、現地インフラの大改修が必要となる。マグカップやその他の小物、放射性降下物の警告マークが入った衣類などを置く、地域で唯一のキオスクも大わらわとなるだろう。

「これまでは、皆がドームで忙しかった」と、トカチェンコ氏は世界遺産に取り組むタイミングについて述べた。「それを実行する時が来た」 (c) AFP/Dmytro GORSHKOV / Ania TSOUKANOVA