2021.01.15

CARS

7代目BMW5シリーズがマイナーチェンジ! ソフトウェアがグンと進化した

近年のクルマにおいては、ハードウェアよりもソフトウェアの進化が著しい。今回マイナーチェンジで新しくなったBMW5シリーズもその1台。ソフトウェアの性能向上が改良の大きな柱になっている。


世界的な成功作

現行5シリーズの国内発売は2017年1月(ツーリングは同年6月)だったから、今回のマイナーチェンジはモデル・ライフ折り返しの定例的なものと考えていい。目に見える部分の化粧直しは、オーナーでないと区別がつかないくらい軽微なところを見ると、現行5シリーズの評判は世界的に上々なのだろう。


外観で変わったのは、左右一体化して横方向と下方向に拡大したキドニー・グリル、内部がL字モチーフとなったヘッドライト、いわゆる眉毛にあたる部分がブルーに光るレーザー・ライト(オプション)、周囲がブラックアウトされて内部のL字モチーフが際立つようになったテール・ライト、そして、これらに合わせて再デザインされた前後バンパー……といったところだ。


パッと見では従来とほとんど区別がつかないインテリアだが、大半のモデルにソフトな肌触りのダコタ・レザー・シートが標準となった(写真はオプションのナッパ・レザー)。

インテリアはスイッチパネルがツヤのあるブラックになった以外は、基本デザインに変更はないという。あと、今回からレザー・シートが(エントリー機種以外で)標準となったのも新しい。


主力パワートレインも現時点では基本的に変更なし。本国ではプラグインを除く全車に48Vマイルド・ハイブリッドが組み合わせられるようになったが、日本仕様での採用は見送られた。さらに、本国では直6プラグインの「545e・xDrive」の初登場が今回のマイチェン最大のニュースなのだが、これも日本ではひとまず用意されない。


一時は日欧でパワートレインが共通化された時代もあったが、最近の環境規制はEUが飛びぬけて厳しくなり、日本と欧州でパワートレインが異なるケースがまた増えてきた。しかも、パワフルなタイプは日本(や北米)専用となることが多い。かつて欧州仕様の方が出力が高く、「ユーロ仕様」という言葉が光り輝いていた時代を知る中高年には、なんとも理解しがたい世の中になったものだ。


笑っちゃうほど軽快

今回は530iセダンと523dxDriveツーリングという、5シリーズでは比較的手ごろな2台を試乗した。どちらもコンパクトな4気筒エンジンで前後重量配分は50:50……どころか、ツーリングはもちろんセダンでも後軸の方が重い。ともにタイヤは穏当な18インチを履いており、身のこなしはあくまでゆったりしている。こういう大人の味わいは全機種で俊敏な味つけのハンドリングを持つ現行3シリーズにはない。しかし、ターンインだけは笑ってしまうほど軽やかなのがBMWらしい。また、宿敵Eクラスと比較すると明らかにサイズが大きく感じるが、同時にいい意味での重厚感がある。


このようにハードウェアでは特筆するほどの変化のない新5シリーズだが、「OK、BMW!」の掛け声でスタートするAIインタフェースや渋滞ハンズ・オフ機能がつく運転支援システムなど、今っぽい技術群がすべてアップデートされたことが、じつは最大の恩恵だろう。


今回の5シリーズを含めたBMWのハンズ・オフ機能は、単独走行では起動しない。具体的にいうと「高速道路(東京近郊でいうと、首都高速は対象だが、圏央道やアクアラインなどは厳密には自動車専用道路なので対象外)でアシステッド・ドライブ(=ACCとレーン・コントロールを作動させた半自動運転状態の)走行中に、前走車によって車速を60km/h以下まで下げられたとき」にのみハンズ・オフが可能となる。だから「今からハンズ・オフしよう」と思っても、周囲の環境が整わないとできない。しかし、無意識に渋滞にハマっていて気づくと「今ならハンズ・オフできますよ」とばかりにステアリングのスポーク部分にLEDが点滅していたりする。そのときにしかるべく操作すると、晴れて手放し運転ができるようになるのだ。


伝統のガラス・ハッチは健在。この一点をもってEクラス・ワゴンでもA6アバントでもなく、5シリーズ・ツーリングを乗り継ぐファンも多い。テール・ランプ内部のL字モチーフも以前より立体的なものになった。

最新BMWオーナーの日常におけるハンズ・オフ走行とは「ふと訪れる憩いの時間」のようなものなのだろう。この機能がなくても別段困らないし、常用するには未完成な部分も多いが、ふと作動したりすると、「今日はご機嫌だな」などとクルマがまるで生き物であるかのように錯覚したりもする。自動運転技術はクルマをつまらなくするだけの無機質なものと考えるエンスーもおられるだろうが、最新のそれに触れると、いやいや、意外なほど濃厚な愛車精神のようなものが育まれる気もする。


文=佐野弘宗 写真=篠原晃一


■BMW530i ラグジュアリー
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4975 × 1870 × 1480mm
ホイールベース 2975mm
トレッド(前/後) 1600 / 1625mm
車両重量(前後重量配分) 1690kg(前840kg:後850kg)
エンジン形式 直列4 気筒DOHC16V 直噴ターボ
総排気量 1998cc
ボア×ストローク 82.0 × 94.6mm
エンジン最高出力 252ps /5200rpm
エンジン最大トルク 350Nm/1450-4800rpm
変速機 8段AT
サスペンション形式(前/後) ダブルウィッシュボーン式/マルチリンク式
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前後) 245/45R18
車両価格(税込) 844 万円


(ENGINE2021年2・3月合併号)

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