■新婦

 仏教徒が多数派を占めるミャンマーでは、イスラム教徒であるロヒンギャは市民として認められず、何十年にもわたって迫害に耐えてきた。そうした中、陸海路での国外への密航ルートは以前から存在していた。

 ロヒンギャが主に目指すのは、比較的裕福なイスラム教国マレーシアだ。現在、10万人以上のロヒンギャが難民として登録され、マレーシア社会の底辺で生きているが、仕事をすることは許されていない。そのためロヒンギャの男性らは仕方なく違法の建設現場や低賃金の職に就いている。

 国連(UN)調査団がジェノサイド(大量虐殺)に当たると報告した2017年のミャンマー軍による弾圧で、ロヒンギャの国外脱出は加速し、75万人が国境を越えてバングラデシュ南東部沿岸のコックスバザール(Cox's Bazar)に逃れた。

 現在、コックスバザールの広大な難民キャンプには100万人が暮らす。そこから外に出る唯一の方法は危険な船の旅だ。

 権利擁護団体や女性の体験者らによると、密航の需要に拍車をかけているのは、マレーシアにいるロヒンギャ男性だ。彼らは密航業者に金を支払って、自らの家族やあっせんで結婚した新婦を呼び寄せようとする。

 マレーシア当局は頻繁(ひんぱん)に船を追い返している。さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を恐れて、ますます難民の受け入れを拒否している。だがAFPの集計によると、今年は3隻の船で500人近いロヒンギャがマレーシアに到着した。

 6月以降、インドネシア北部にも過去5年間で最多のロヒンギャ約400人が上陸している。全員、目的地は隣国マレーシアだ。

 一方、洋上で暴力や飢え、脱水症状などで死亡したとみられるロヒンギャは数百人に上るとみられる。バングラデシュに戻った船もある。

 インドネシアに到着した船に乗っていたロヒンギャの多くは女性だった。その一人、ジャヌーさん(18)はインドネシア・アチェ(Aceh)州沿岸の町、ロクスマウェ(Lhokseumawe)の仮設キャンプでAFPの取材に応じた。

 ジャヌーさんは家族の仲介によって、マレーシアにいるロヒンギャ男性の労働者と結婚すると明かした。「キャンプで2年間待ちましたが、危険を冒したかいがありました」とジャヌーさん。何人も成し遂げた例があるように、自分もマレーシアへ行く方法を見つけられるかもしれないと語った。