【12月25日 東方新報】貿易や投資を高い水準で自由化する環太平洋連携協定(TPP)に中国が「本気」で加盟しようとしている。なぜこのタイミングで意欲を見せているのか。

 中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は先月20日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)で、TPPへの参加を「前向きに検討する」と初めて表明した。世界各国は驚きつつ、実際の早期加盟は難しいだろうと懐疑的な見方が大半だった。しかし今月18日、翌年の経済政策方針を決める中国の中央経済工作会議で、「TPPへの参加を積極的に検討する」と表明。これまでの「前向きで開放的な姿勢」という公式見解より踏み込んだ。

 TPPは関税の撤廃率が高く、例えば日本の工業製品に対する関税撤廃率はほぼ100%だ。国有企業への補助金支出を原則として禁じ、知的財産権の保護規定も強化している。電子商取引では外国企業にソフトウエアの設計図となる「ソースコード」の開示を求めてはならないとしている。中国は国有企業に補助金や規制上の優遇措置を与え続け、ソースコードの開示要求にこだわっているため、TPP参加のハードルは高い。

 これに対し、魏建国(Wei Jianguo)元商務副大臣は中国メディアのインタビューに「TPPへの参加を検討することは、中国の内部改革への決意を示している」と説明する。TPPに参加するために国有企業への優遇など国際ルールに沿っていない部分を改革し、国内外の企業が平等に競争する環境を保障すれば、中国経済の体質改善につながり、海外からの企業進出や投資を加速させる好機となるという。

 TPPは米国が離脱したことに伴い、米国が強く求めていた医薬品のデータ保護など約20項目が凍結されている。米国では次期バイデン政権がTPP参加を検討しており、中国にとってはハードルが低いうちに参加したい思惑がある。TPP加盟には凍結項目への合意も条件となっているが、ベトナムが発展途上国であることを理由に国有企業に関する例外規定が適用されているように、中国も米国不在の今なら、一定の例外規定を勝ち取ることが可能という計算があるかもしれない。

 習氏がTPP参加の検討を表明したのは、日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)各国など15か国が東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定をまとめた直後のタイミングだ。RCEPとTPPでは、日本、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、ベトナム、ブルネイが両方に加盟している。TPPはRCEPに比べ自由化のレベルは高いが、中国はこれらの国々との関係を足がかりに、TPP参加に必要な加盟国の承認を取り付けるとみられる。

 TPPはもともと、米国がオバマ政権の時代に中国包囲網形成を狙って推進してきた。その枠組みに中国が参入してアジア・太平洋地域での影響力拡大を図るか、米国が復帰して主導権を握るか。来年以降、TPPは世界経済の「陣取り合戦」の舞台となりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News