【12月21日 AFP】米国で政権交代が1か月後に迫り、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が選挙結果に異議を唱える姿勢を続ける中、顧問らが結果を覆すために戒厳令の発動を提案したことが報じられ、政権内に怒りと驚きの声が広がっている。

 米主要紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)とウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、CNNテレビによると、18日にホワイトハウス(White House)で、ジョー・バイデン(Joe Biden)氏の当選を阻み選挙結果を無効にするための新たな方策が議論され、トランプ氏もこれに出席した。その中で同氏の試みを支援するために軍を動員することが提案されたが、却下された。会議は時折「怒鳴り合い」に発展したという。

 複数の報道によると、トランプ氏は投票時に使用された機械を回収して調べることや、シドニー・パウエル(Sidney Powell)氏を特別検察官に任命し、大統領選で大規模な不正が行われたとするトランプ氏の根拠のない主張の調査を続けることも検討した。トランプ陣営の弁護士だったパウエル氏は、大統領選に関するとっぴな陰謀論を主張している。

 トランプ氏は20日、「戒厳令(の報道)はフェイクニュース。知ったかぶりの悪質な報道が増えただけだ」とツイッター(Twitter)に投稿し、18日の会議に関する報道を否定した。

 複数の軍高官はこれまで、全州が認め、選挙人投票で確定した大統領選の結果を覆すいかなる試みにも力を貸すことはないと明言している。

 ライアン・マッカーシー(Ryan McCarthy)陸軍長官とジェームス・マコンビル(James McConville)陸軍参謀総長は18日に出した声明の中で「選挙結果の決定における米軍の役割はない」としている。

 米ニューヨーク大学(New York University)ブレナン司法センター(Brennan Center for Justice)が今年発表した研究によると、トランプ氏が戒厳令を出すには、いかなる場合にも連邦議会の承認が必要となるという。

 戒厳令の議論に関する報道は政権全体に衝撃を与え、厳しい批判や失望を招いた。(c)AFP/Brian KNOWLTON