【12月25日 AFP】イタリア人のアウグスト・グリーリ(Augusto Grilli)さん(80)は、75年近く前のクリスマスプレゼントを思い返し、今も目を輝かせる。プレゼントとしてもらったのは、小さな舞台のセットと12体のマリオネット(糸操り人形)だった。それがきっかけで、グリーリさんは操り人形師としてのキャリアを積み、生涯、人形劇に情熱を傾けてきた。

「あれは1946年、第2次世界大戦(World War II)が終わって最初のクリスマスで、祝福と喜びに包まれ、とても特別な雰囲気でした」とグリーリさんは振り返った。

「クリスマスプレゼントの中に大きな箱があり、舞台セットと操り人形が入っていた。一目で大好きになりました」

 グリーリさんは、人形師としての才能を発揮。通っていたイタリア北部トリノ(Turin)の学校でたちまち人気者になった。

「人形劇をよくやりましたよ」とグリーリさんはAFPに話した。子どもたちが大喜びするからと、小学校の全クラスに呼ばれて人形劇を披露した。

 金色と白色の小さな舞台は現在、プラスチック製の箱の中に丁寧に保管され、新設されるインターナショナル・パペット・ミュージアム(International Puppet Museum)に運ばれるのを待っている。そうした箱が他にもたくさんある。

 グリーリさんと妻のマリアローザ(Mariarosa Grilli)さん(78)がずっと夢見ていたミュージアムは、2023年にトリノでオープンを予定している。資金は、官民さまざまな機関や団体から支援を受けて調達した。

 グリーリさん一家は、世界中から集めた人形劇関連のアイテムを2万点以上持っている。劇場で使用されるアイテムから、マリオネット、手を入れて動かすパペット、影絵人形劇の人形までさまざまだ。

 初めは単なる趣味で、グリーリさんは「父親から言われるがままに」機械工学の分野に進学し、操り人形は友人に披露する程度だった。しかし1978年に思い切ってプロに転向。ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)の「魔笛(The Magic Flute)」やジョアキーノ・ロッシーニ(Gioacchino Rossini)の「セビリアの理髪師(The Barber of Seville)」などの叙情的なオペラ作品を含め、子どもから大人まで楽しめる人形劇を上演してきた。

「ステージに立っているときの気持ちは説明しにくい。奥深くて。操り人形師は人形の一部で、人形もまた人形師の一部なんです」とグリーリさんは熱く語った。(c)AFP/Celine CORNU