【12月26日 AFP】恐ろしい爆弾攻撃で重度の障害を負ったコロンビア人アスリートのフアン・ホセ・フロリアン(Juan Jose Florian)さんは、南米で最も長く続く内戦の中で四肢の3本を失ったが、一つの明確な目標を得た。東京パラリンピック競技大会の金メダルだ。

 38歳のフロリアンさんは、50年間続いたコロンビア内戦の両陣営に従軍した経験を持つ。初めは、左翼ゲリラ組織だったコロンビア革命軍(FARC)の少年兵として。次いで、政府軍に所属して。

 手にしたわなに仕掛けられた小包が爆発し、両腕と片脚を失ったフロリアンさんだが、今では、来年の東京パラリンピックに出場するという最大の夢まであと一歩に迫っている。

「アスリートの自分を想像したことなどなかった」とAFPに語る彼の子どもの頃の夢は、兵士になることだった。

■「人生の贈り物」

 まだ15歳の時、住んでいた村がFARCに襲撃され、連れ去られて入隊させられた。これがフロリアンさんがFARCの一員となった経緯だ。

 多くの少年がそのようにしてFARCの兵士となった。コロンビア国立歴史記憶センター(National Center for Historical Memory)によると、FARCには彼のような少年兵が6068人いたという。

 9か月後にFARCを抜け出してコロンビア軍に降伏し、成人すると入隊した。

 フロリアンさんは小包が爆発した後、自分の肌から煙が立ち上り、両腕と右脚の感覚がなかったことを覚えている。

「兄弟に、ライフルを取ってきて僕の頭を撃ってほしいと頼んだ。幸い、彼はそうしなかった」

 フロリアンさんは今では、障害をもたらしたこの爆発が、ある種の転機になった「人生の贈り物だ」と考えている。

 退役したフロリアンさんは、リハビリ中にパラリンピックの存在を知り、水泳に夢中になった。

 そして、2013年にミネアポリス(Minneapolis)で開かれた障害者の競技大会で優勝したが、メダル獲得の可能性がさらに高いのは自転車競技だった。

 コロンビア空軍のエンジニアが、彼の両肘と膝の末端を支えるカーボンファイバーの装具を設計してくれた。自転車のギアチェンジは口で行い、ブレーキは太ももを使い圧力をかけて操作する。

 フロリアンさんは、重度の障害のクラス「C1」に属す30人の選手の中で最も若い一人だ。

「このカテゴリーの中で、私が一番の格下、一番切断されている」と自分をからかうように語り、両腕の端を誇らしげに持ち上げた。

 コロナ禍の影響で「1年間トレーニングをする時間が得られた。もし東京でなければ、(2024年の)パリに行く」とフロリアンさんは語った。(c)AFP/Florence PANOUSSIAN