【12月19日 CNS】「皆さん、こんにちは。今日おすすめの商品はこちらです」。中国福建省(Fujian)福州市(Fuzhou)の張墩煌(Zhang Dunhuang)さんは、自宅からインターネットのライブ配信で商品の販促活動をしている。中国で広まっている「帯貨主播(ネットバイヤー)」の1人だ。11月は4万元(約64万円)以上も稼いだが、苦労は絶えない。チャンネル登録者は4万人いても実際の視聴者がわずか3人という時も。それでもハイテンションで笑顔を振りまき、13時間連続でライブを続けている。

 中国では2016年、日本のユーチューバーのようなライブ配信ブームが始まった。「流行好きで、ちょっとエンタメ的才能がある」と自認する張さんもライブ配信を始めた。

「あっという間にフォロワーが増えて、大もうけして…」。そんな皮算用をしていたが、2017年後半に入るとライブ配信ブームは冷え込み、ショートビデオ投稿プラットフォーム「抖音(Douyin)」などへのビデオ投稿が流行になった。張さんもショートビデオを撮影、投稿して稼ごうとした。そして2019年、ネットのライブ販売が人気になると、張さんはまた乗り換えた。

「抖音」にアカウント登録し、最初は商品の選択から仕入れ、販売、配送まで1人で行ったが、売り上げは伸びない。今年6月からオンラインモール「淘宝(Taobao)」と協力し、協力店舗の商品販促に切り替えた。

 自分の懐に入る利益は、商品によって値段の5~20%程度。張さんは試行錯誤の末、9月からようやく安定期に入った。「9月までは約4時間のライブ配信で売り上げは約3000元(約4万7000円)程度。その後は一晩で1万元(約16万円)以上売れるようになった」

 売り上げが伸びたのは、長時間ライブ配信によるところが大きいという。長くライブを続けると、爆発的に売れ行きが伸びる瞬間があるからだ。張さんは毎週火曜、木曜、土曜の午後4時からライブ配信を始める。早ければ午前零時に終わるが、売れ行きがあれば夜明けまで13時間以上続ける。「翌日はたいてい、かすれた声になるよ」

 ネットバイヤー業界では何人も大スターがいる。「口紅王子」と呼ばれる男性美容家の李佳琦氏(Li Jiaqi)は、口紅をセールスする1回のライブ配信で2000万元(約3億2000万円)の売り上げを誇る。「帯貨女王(販促女王)」と呼ばれる薇婭さん(Wei Ya)は、2018年11月11日に中国最大のオンラインセール「双十一(ダブルイレブン)」で、3億3000万元(約52億8000万円)の売り上げを記録した。

 中国の就職情報サイト「BOSS」の研究院のデータによると、今年上半期のネットバイヤーの平均月収は1万1220元(約18万円)で、一般の職業と比べて比較的高い水準にある。しかし内実は二極化傾向にあり、ネットバイヤーの71%は1日10~12時間活動し、月収は1万元(約16万円)未満。都市部では決して高い水準とは言えず、彼らを指して「底辺バイヤー」という言葉もある。

 それに比べると現在の張さんは「成功者」と言えるが、常に不安と背中合わせという。「今日は売れ行きが良かったが、次回は誰も商品を買ってくれなかったらどうしよう。いつもそんな焦りがあります」。張さんはそう打ち明ける。(c)CNS-中新経緯/JCM/AFPBB News