【12月15日 AFP】オーストラリアのスコット・モリソン(Scott Morrison)首相は15日、同国産の石炭の輸入を中国が禁止したとする現地報道を受け、世界貿易機関(WTO)協定に明らかに違反すると非難した。

 両国の緊張が高まる中、中国国営・環球時報(Global Times)は13日、オーストラリアが輸出する数十億ドル相当の石炭が現在、非公式に禁輸対象とされていると報じた。同紙によると、中国各地の発電所は石炭の調達先を国内またはオーストラリア以外の国々に変更するよう指示を受けているという。

 これについて、モリソン氏は中国政府は報道内容をまだ認めていないとしつつ、「もしそうだとしたら、明らかなWTO協定違反になる」と述べた。両国間では現在、閣僚級の接触はないと言われているが、モリソン氏は「わが国はこの件について明確な説明を求めている」と語った。

 両国の関係は1989年の天安門(Tiananmen)事件以来、最悪の状態で、中国政府はオーストラリア製品に次々と経済制裁を科している。それぞれの制裁の理由は技術的な問題だとされているが、オーストラリア政府は自国およびアジア太平洋地域での中国の影響力を押し返していることへの報復だとみている。

 オーストラリアの少なくとも13の業界が関税などの何らかの形で妨害を受けており、それには大麦や牛肉、綿花、ロブスター、砂糖、木材、銅、ワイン、小麦、羊毛といった品目だけでなく、観光、大学教育も含まれている。

 石炭の禁輸は以前からうわさとなっており、オーストラリアから出荷された石炭の多くがすでに中国の港で止められていると報じられている。

 中国政府の政策決定機関は、大気をひどく汚染する石炭がエネルギー生産に占める割合と、外国産燃料への依存度を同時に下げようとしている。

 しかし、オーストラリアにとって石炭は、最大で年間30億ドル(約3100億円)相当を輸出している貴重な輸出品の一つで、モリソン氏率いる保守党政権は、環境保護団体などの反対にもかかわらず、石炭業界を熱心に擁護してきた。中国がオーストラリアの石炭の輸入を非公式に禁止することは、事態の劇的な悪化を招きかねない。

 モリソン氏は、両国は過去数十年にわたって緊密な貿易関係の恩恵を受けてきたと述べ、「成熟した議論」を呼び掛けた。さらに、「オーストラリアは常に中国の経済発展に関与してきた」と述べた上で、「わが国は常に中国の経済成長を支持してきた。中国の成長を阻止しようとしてきた国の一つではない」と訴えた。(c)AFP