【1月3日 AFP】1人は耳が聞こえず話せない、もう1人は下半身が動かない。しかし2人そろえばうまくいく──アハマド・ムサ(Ahmad Moussa)さんとバデル・ハッジャミ(Bader al-Hajjami)さんはコンビを組んで、内戦で荒廃したシリアでの生活をやりくりしている。

 長い歴史を持つ首都ダマスカスの小道で、2人は日課の散歩を楽しんでいる。バデルさんの車椅子を押すのはアハマドさんの役目だ。

 知り合って3年。2人は相手のいない人生は考えられないと言い合う友人同士だ。28歳のバデルさんは、「僕たちは一つのチームです」とAFPに語った。「僕の耳は彼のもの、彼の脚は僕のものなのです」

 モロッコ系の祖先を持つが生まれも育ちもダマスカスのバデルさんは2012年、爆弾の破片が脊髄に当たり、両脚がまひした。それ以来、2年前にアハマドさんと出会うまでは車椅子が唯一の友だったと振り返る。

 24歳のアハマドさんはわずか2歳のときに突然の病気で聴力を失い、話すこともできなくなった。

 バデルさんはアハマドさんから手話を学び、彼の通訳をするようになった。「食事でも遊びでも、僕たちはほぼいつも一緒です」と言い、アハマドさんなしの生活は想像できないという。

■隔絶された世界

 シリアには、アハマドさんやバデルさんのように障害のある人々が全人口の27%、約370万人いる。2011年にぼっ発した内戦では38万人以上が死亡したが、障害者の数も増えた。

 ダマスカス中心部で週に1度、アハマドさんはバデルさんを手伝ってタクシーに乗り込み、バスケットボールの練習に向かう。スタジアムに着くとアハマドさんが用意したスポーツ用の車椅子にバデルさんが乗り換え、2人でパス交換しながらコートを走り、ゴールネットを揺らす。

 アハマドさんはバデルさんの通訳を介して「耳が聞こえない人はひとりぼっちの世界に住んでいます。目の見えない人も、車椅子の人も同じです」と説明した。「普通は障害ごとに世界が隔たれていて、交わることはありません」。だが「チームを組めば、状況は皆にとってはるかに良くなります」。その好例が、唇の動きからキーワードを拾うことを教えてくれたバデルさんとの関係だ。

 あるときは、2人のこの連携が命を救った。「ダマスカス東部のバブトゥーマ(Bab Touma)地区で砲弾が爆発した日のことは忘れません」とアハマドさん。今すぐ逃げるべきだとバデルさんが言わなかったら、逃げ遅れていたかもしれない。そのときアハマドさんは、バデルさんを「抱えて逃げました」。