【12月31日 AFP】中国中部の有名な景勝地「天門山(Tianmen Mountain)」では、観光客によるポイ捨てが絶えない。

 ポイ捨てされるごみを拾うのは清掃作業員のヤン・フェイユエ (Yang Feiyue)さん(48)の仕事だ。ただ、ヤンさんはごく普通の清掃員ではない。崖の上からロープで400メートル下までつるされ、崖面に引っかかったごみを拾い集める特別な清掃員なのだ。

「怖いかって?」と、ヤンさんは落下防止用のフェンスをまたぎながら質問に応じ、「怖くない。慣れたよ」と答えた。

 現地メディアはヤンさんとそのチームを「ザ・スパイダーメン(Spidermen)」と呼ぶ。

 ヤンさんは、切り立った崖を下降しながら、宙づりの状態で観光客が投げ捨てたごみを拾い集める。

 崖の上では、岩に打ち込まれたいくつかのフックにロープが固定され、それをチームのメンバーがしっかり握っている。作業が終わると、滑車を使った巻き上げ装置でヤンさんは引き上げられる。

 ごみ収集袋は、飲料水のボトル、包装用プラスチック、ティッシュなどでいっぱいになる。ヤンさんは、雨が降ると使い捨てポンチョも拾うと話し、また新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の影響から「マスクも捨ててある」と説明した。

 ヤンさんらのチームは、崖の斜面にたまるごみの回収を目的に、天門山の公園管理当局によって2010年に立ち上げられた。ごみの問題は、中国の景観地では珍しくはない。

 観光地に並ぶ屋台もその原因の一つ。屋台で使われる容器があちこちに、そして時に崖の下にポイ捨てされるのだ。

 それでも、学校やメディアを通じた働きかけにより、中国では人々の環境に対する意識が高まっている。公共の場に設置されるリサイクル用回収箱も増えた。

 公園の観光推進担当者は、ここ10年でごみは減っていると話し、「以前は、わが『スパイダーメン』が年間5トンのごみを収集していた。近頃の観光客は、以前よりも行儀が良い」と付け加えた。

 ヤンさんたちは今年、約2トンのごみを拾い集めた。コロナ禍で観光客が激減しても、これだけのごみがポイ捨てされていくのだ。

 映像は11月12日撮影。(c)AFP/Ludovic EHRET