【12月13日 AFP】かつては男性の股間を寒さから守るために使われたウール製の「コッドピース(現地語でナーコロニャク、nakurnjak)」が、クロアチアのある村の土産物として人気を集めている。伝統ある手仕事の保全に務める女性たち数人の努力がその背景にある。

「ナーコロニャクは、笑い、ポジティブなエネルギー、ジョークを誘います。多く(の観光客)が、いいクリスマスプレゼントとして買って帰ります」

 そう語るのは、ソーニャ・レカ(Sonja Leka)さん(55)。リカ(Lika)地方の小さな村で、昔ながらの伝統的な編み物の保全協会を運営している。

 欧州では15~16世紀、股間を覆うコッドピースが流行アイテムとなった。英国のヘンリー8世(Henry VIII)をはじめとする王室の肖像画にも登場する。

 だがバルカン諸国の一般男性は、より実用的な理由でコッドピースを着用していた──防寒と乗馬の際の衝撃を和らげるための下着としてだ。

「男性の伝統衣装の大きなズボンの内側には、何も保護するものが施されていなかったのです。彼らは馬に乗り、薪集めに森を歩き回る必要があったので、ナーコロニャクが活躍しました」とレカさんは語る。

 人口約100人のリチコペトロボセロ(Licko Petrovo Selo)村の小さな建物に協会の女性らが集まり、伝統的な靴下やハンドバッグ、タオル、そしてナーコロニャクを作っている。

 近くには、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産に登録されたプリトビツェ湖群国立公園(Plitvice Lakes National Park)がある。ここを訪れる観光客にナーコロニャクが人気なのだと、地域の観光ガイドも務めるレカさんは話す。

 協会は、各国大使館や地方自治体からの支援を受けており、昨年は主に米国からの観光客約600人が訪れた。協会の古びた建物の向かいには、立派なホテルがあるが、新型コロナウイルスの影響で今はがらがらだ。

 ベテランの編み手たちは、ナーコロニャクはかつて花嫁の重要な持参品で、女性たちが未来の夫のために手作りした品々の一つだった、と語った。

 1950年代後半には綿の下着が入手しやすくなったこともあり、ナーコロニャクの出番はなくなった。

 協会のアンカ・プリーチャ(Anka Prica)さん(73)は「私たちは、おしゃべりと仕事のためにここにきています。伝統の手工芸品や編み物、織物が忘れ去られてしまわないように」と語った。

 映像は10月30日撮影。(c)AFP/Lajla VESELICA