【12月11日 AFP】ラグビーW杯(Rugby World Cup)で優勝経験を持つ元イングランド代表のスティーブ・トンプソン(Steve Thompson)氏ら元プロ選手8人は、脳に損傷をきたしたのはワールドラグビー(World Rugby)をはじめ、イングランドラグビー協会(RFU)とウェールズラグビー協会(WRU)の怠慢に責任があるとして、共に訴訟を起こす計画を立てている。

 トンプソン氏らの訴えを受けて、ラグビー選手協会(RPA)のトップを務めるダミアン・ホープリー(Damian Hopley)氏は、「可及的速やか」に練習方法への対処が必要であると強調し、「誰にとっても本当に痛ましいことだ」と英BBCに語った。

「非常に高い確率で負傷は練習時に起きているため、今回はこうした問題に取り組み、これまでも話し合われてきたように、この競技をより安全に行うためには何ができるのか検討する機会にすべきだと思う」

「練習の手順については、可及的速やかに対処すべきだろう」

 現在42歳のトンプソン氏は早期発症型の認知症と診断され、2003年のW杯でイングランドが優勝したときの記憶が全くないと話している。元ウェールズ代表のアリックス・ポパム(Alix Popham)氏と元イングランド代表のマイケル・リップマン(Michael Lipman)氏も、共に40代前半にして若年性認知症にかかっており、慢性外傷性脳症(CTE)の可能性もあるという。

 選手側の代理人を務める弁護士のリチャード・ボードマン(Richard Boardman)氏は、英PA通信(Press Association)に対して、最大5割の元プロ選手が現役引退後に神経学的合併症を患う可能性があると指摘した。

 しかし、イングランド・プレミアシップとヨーロピアンラグビーチャンピオンズカップ(2019-20 European Rugby Champions Cup)の現王者であるエクセター・チーフス(Exeter Chiefs)のロブ・バクスター(Rob Baxter)ヘッドコーチ(HC)は10日、この問題に関して過去の事例と現在を比較しても「ほとんど意味がない」とコメント。ラグビー界の脳振とう対策を断固擁護する姿勢を示し、ラグビーは「頭部負傷者が安全に練習に戻れる監視体制においておそらくリードしている」と強調した。

「彼らに起きたことは、不幸ではあるがずっと昔のことだ」「当時と現在の違いには大きな開きがあり、両者を比較しようとしてもほとんど意味がない」

 一方、ワールドラグビーの広報担当者は、「推測での発言は控えるが、ワールドラグビーは引退した選手も含めて選手全員の健康について最も配慮している」とし、「われわれは断固として、証拠に基づいて負傷を防止すること、脳振とうの研究とマネジメントおよび防止対策を最優先にすること、そして最新の研究と症例ならびに知識を基に行動することを保証する」と述べた。(c)AFP