【1月2日 AFP】バーナーやたがねを手にした職人たちが木製の作業台の前に座り、溶かした金を型に入れ、輝かしい宝飾品に加工していく。ここはマレーシアの金細工工房だ。

 安全資産とされる金の需要は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)中に急増した。この機に乗じて、プロの投資家だけでなく小規模事業者も利益を上げている。

 マレーシア北部クランタン(Kelantan)州で主に宝飾品を製造している貴金属製品メーカー「マクムール・ゴールド(Makmur Gold)」では今年、不況に陥った同国の経済とは裏腹にビジネスが好調だ。

 同社のムハマド・ヌル・ヒシャム・チェ・マフムード(Muhammad Nur Hisyam Che Mahmood)氏はAFPに、「好ましい展開です。新型コロナウイルスの流行中、売り上げは大きく増えました」と語った。

 今年は株式市場が暴落する中、金の価格が高騰し、8月には過去最高の1オンス当たり2000ドル(約20万8000円)超を記録した。その後は約1800ドル(約18万7000円)まで下がったが、金を買う人々は現金を安全な形に変えようとしている。

 マクムール・ゴールドはこの8か月間で、約8000万リンギット(約20億4200万円)の売り上げを達成した。同社は原料の金の大半を、国内の業者から宝飾品の形で調達するか、顧客から中古品を買い入れ、それらを溶かして新たな製品に作り変えている。

 看護師のノール・ファジラ・ジャマルディン(Nor Fazilah Jamaludin)さんはパンデミックの最中、収入を増やすために、金のジュエリーの販売もしたという。「女性はきれいだから宝飾品を買うけれど、金を買うメリットは、むしろ将来に向けた投資でしょう」とAFPに語った。

 マレーシア宝飾連合協会(Federation of Goldsmiths and Jewelers Associations of Malaysia)のスティーブン・シャオ(Steven Siow)会長によると、新型ウイルス対策で6週間のロックダウン(都市封鎖)が実施された後、5月に小売店など営業再開が許可されると、マレーシアの人々は金の購入に殺到した。

 ワクチンが近々登場するとの見込みが高まると金の価格は下がったが、専門家らは世界経済の回復の道のりは険しく、当面安全な投資先は貴金属だとみている。

 サンウェイ大学(Sunway University)経営大学院のイェ・キム・レン(Yeah Kim Leng)教授(経済学)は「いかなる危機においても、金は注目すべき重要な資産だろう」と述べた。(c)AFP/Patrick Lee